ペレニアルライグラスのCBFホモログ遺伝子の単離と遺伝子座の同定
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要約
ペレニアルライグラスから複数の新規なCBFホモログ遺伝子が単離でき、これらは低温で発現誘導される。4つのCBFホモログ遺伝子がクラスターを形成し5番染色体に座乗する。この領域は他のイネ科作物のCBF遺伝子座および低温耐性関連QTL近傍に相当する。
- キーワード:飼料作物育種、イネ科牧草、転写因子、マッピング、シンテニー、低温耐性
- 担当:北海道農研・寒地飼料作物育種研究チーム
- 連絡先:電話 011-857-9260、電子メール seikajouhou@ml.affrc.go.jp
- 区分:北海道農業・畜産草地、畜産草地
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
CBF(C-repeat binding factor)/DREB1(DRE binding protein 1)は低温等に応答しその下流のストレス耐性関連遺伝子を誘導する転写因子であり、植物の低温馴化における最も重要な因子の一つである。コムギやオオムギでは越冬性などの低温耐性関連形質のQTLがCBF遺伝子座の近傍に位置することから、CBF遺伝子は低温耐性関連形質の選抜マーカーの候補と考えられている。そこで寒地型イネ科牧草であるペレニアルライグラスの越冬性向上のための知見の蓄積を目的として、CBF遺伝子を単離し発現解析を行うとともに、その遺伝子座を同定し多くの知見が蓄積されているムギ類との比較ゲノム的な検討を行う。
成果の内容・特徴
- CBF遺伝子特有の保存領域を利用し、ペレニアルライグラスcDNAライブラリーからコムギやオオムギ等由来のCBF遺伝子と高い相同性を示す9種のホモログ遺伝子(LpCBF)を単離した。分子系統樹解析の結果、LpCBFはHvCBF3サブグループとHvCBF4サブグループに分類される(図1)。
- 幼苗を用いた半定量RT-PCRによる発現解析の結果、 LpCBFは低温(4℃)下で1時間以内にmRNAレベルで発現が誘導される。低温下に長期間おいたときの発現パターンは遺伝子により異なり、HvCBF3サブグループの遺伝子は1日目以降発現が低下するのに対し、HvCBF4サブグループの遺伝子は1日目以降も一定レベルで発現する(図2)。
- 各遺伝子特異的プライマーを用いたマッピングの結果、同じHvCBF3サブグル-プに属するLpCBFIb,II,IIIbおよびIIIcはペレニアルライグラス連鎖地図の5番染色体に2.2cMの範囲にクラスターを形成して座乗する(図3)。
- ペレニアルライグラスのCBF遺伝子座は、近傍マーカーの情報やこれまでの比較ゲノムデータよりオオムギやコムギのCBF遺伝子座とシンテニーの関係にある。このオオムギやコムギのCBF遺伝子座近傍には低温耐性QTLFr-2 が存在する(図3)。
成果の活用面・留意点
- 低温耐性選抜マーカー開発や低温耐性の向上を目的とした形質転換体の作成の参考となる。
- 単離された遺伝子の機能解析は行っていない。また、ペレニアルライグラスにおける低温耐性関連QTLとCBF遺伝子座の関係は未解明である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:大規模草地・飼料畑の活用のための高TDN飼料作物品種の育成
- 課題ID:212-c
- 予算区分:基盤研究費
- 研究期間:2004~2006年度
- 研究担当者:田村健一、田瀬和浩、眞田康治、小松敏憲、山田敏彦
- 発表論文等:Tamura K et al. (2007) Theor Appl Genet 114:273-283