テンサイ黒根病抵抗性遺伝子座Acr1と連鎖するDNAマーカー
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要約
テンサイの「NK-310mm-O」に由来する黒根病抵抗性は、単一優性の抵抗性遺伝子(Acr1)により支配され、この抵抗性遺伝子座に5cM以内で相引に連鎖するDNAマーカーを指標とした抵抗性の判別により、黒根病の抵抗性株を簡便に選抜できる。
- キーワード:テンサイ、DNAマーカー、黒根病、抵抗性、QTL、AFLP
- 担当:北海道農研・寒地バイオマス研究チーム
- 連絡先:電話011-857-9260、電子メールseikajouhou@ml.affrc.go.jp
- 区分:北海道農業・生物工学、作物
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
テンサイ黒根病(Aphanomyces cochlioides)は、排水不良畑や連作畑などで発生が多く、テンサイの主要病害のひとつであるが、普及品種への抵抗性の付与は十分ではない。また、本病は難防除の土壌病害であり、その防除対策として抵抗性品種の作付けが最も効果がある。このため、抵抗性を付与した品種を普及することにより、テンサイの安定栽培が実現できる。
他殖性の二年生作物であるテンサイの品種改良を効率的に行うには、育種で最も労力のかかる交配、選抜操作の省力化が不可欠である。DNAマーカーを利用した間接選抜では、圃場や表現型に依存しない抵抗性選抜が可能であり、品種育成年限は飛躍的に短縮される。
そこで、黒根病抵抗性遺伝子座と連鎖するDNAマーカーを開発すれば、DNAマーカーを指標とした抵抗性の判別が可能であり、抵抗性品種の早期育成に繋がる。
成果の内容・特徴
- QTL解析集団は、高度黒根病抵抗性系統「NK-310mm-O」と罹病性系統「NK-184mm-O」の交配に由来するF3系統群である。両系統のF1の発病指数は「NK-310mm-O」の値に近く、完全優性に近い部分優性の抵抗性を発現する(図1)。
- Win QTL Cartographer によるQTL解析を行うと、連鎖群3に単峰性のLODピークが検出され、このQTLにより表現型変異の約65%が説明できる(表1)。
- 「NK-184mm-O」を抵抗性株へ戻し交配したB2F2集団における接種検定では、健全根と腐敗根の分離比は3:1であり、抵抗性は単因子の遺伝モデルに適合する(表2)。
- 抵抗性QTL近傍のDNAマーカーを用いて連鎖分析すると、抵抗性遺伝子座が同定できる。このうち、抵抗性選抜DNAマーカーは、抵抗性遺伝子座と5cMの範囲内で相引に連鎖する6つのAFLPマーカーからなり、これを指標に抵抗性株が判別できる(図2)。
- これまで、本病の抵抗性遺伝子に関する報告はないため、Acr1と命名する(図2)。
成果の活用面・留意点
- 黒根病抵抗性育種素材の開発および抵抗性品種の早期育成に利用できる。
- 本DNAマーカーを用いた黒根病抵抗性選抜法は、特許出願している。
具体的データ




その他
- 研究課題名:てん菜の省力・低コスト栽培のための品種の育成
- 課題ID:211-f
- 予算区分:高度化事業
- 研究期間:2002~2006年度
- 研究担当者:田口和憲、大潟直樹、岡崎和之、高橋宙之、中司啓二