血圧降下作用を有するダイズ形質転換体

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

血圧降下作用を示すペプチド(ノボキニン:RPLKPW : Arg-Pro-Leu-Lys-Pro-Trp)配列を挿入したダイズ貯蔵タンパク質は、ダイズ種子に蓄積する。この種子から調製した脱脂粉およびタンパク質画分は、経口投与により高血圧自然発症ラットに対し血圧降下作用を示す。

  • キーワード:ダイズ、血圧降下ペプチド(ノボキニン)、貯蔵タンパク質、遺伝子組換え
  • 担当:北海道農研・低温耐性研究チーム
  • 連絡先:電話 011-857-9260、電子メールseikajouhou@ml.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・生物工学、作物
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

食品タンパク質には多様な生理活性を示すペプチド配列が潜在的に含まれていることが判明しつつあり、それらの中には経口投与で有効なものがかなりの頻度で見出される。ただ、これらの生理活性ペプチドを食品から摂取するには、単一の食品を大量に摂取する必要があり、現実的ではない。一方、ダイズ種子には約40%のタンパク質が含まれ、高いタンパク質生産性を有している。そこで、卵白アルブミンから単離された動脈弛緩・血圧降下機能ペプチド・オボキニンを基に作用が100倍に強化されたノボキニンを、部位特異的変異によってダイズ貯蔵タンパク質β-コングリシニン(7Sグロブリン)へ導入し、ダイズ種子で生産するとともにその有効性を解析することを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 改変型β-コングリシニンのα’サブユニット(4RPLKPW-α’)は、血圧降下作用を示すペプチドであるノボキニンのアミノ酸配列をN末側の可変領域に4個含んでいる(図1)。
  • 4RPLKPW-α’をコードする遺伝子は種子特異的プロモーターであるα’サブユニットのプロモーター領域と接続され(図1)、ダイズ品種「Jack」に導入されている。
  • 組換えダイズ種子の可溶性タンパク質には4RPLKPW-α’が0.4から0.6%含まれていると推定される(図2)。
  • 組換えダイズ種子から抽出したタンパク質画分は、0.5 g/kgの経口投与により高血圧自然発症ラットの血圧を15-20 mmHg降下させる(図3)。脱脂種子粉も0.6 g/kgで同様の効果を示す。

成果の活用面・留意点

  • ダイズ種子において有用タンパク質を生産するための基本情報となる。
  • 血圧降下作用は動物実験での結果であり、ヒトでは確認していない。

具体的データ

図1.血圧降下機能ペプチド・ノボキニン(RPLKPW)を4個含む改変型β-コングリシニン( 4RPLKPW-α’)遺伝子の導入用ベクター

図2.血圧降下機能ペプチド・ノボキニン(RPLKPW)を4個含む改変β-コングリシニン(4RPLKPW-α’)のダイズ種子への蓄積

図3.高血圧ラットに4RPLKPW-α’ダイズの種子タンパク質を投与した場合の血圧降下作用

その他

  • 研究課題名:作物の低温耐性等を高める代謝物質の機能解明とDNAマーカーを利用した育種素材の開発
  • 課題ID:221-e
  • 予算区分:新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業
  • 研究期間:2002~2006年度
  • 研究担当者:石本政男、西澤けいと、内海成(京大院農学)、大日向耕作(京大院農学)、吉川正明(京大院農学)
  • 発表論文等:特開2006-238821 発明の名称「機能性ペプチド含有ダイズ形質転換体およびその利用」