TDN含量の高い寒地・寒冷地向きサイレージ用トウモロコシ新品種「北交65号」

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

「北交65号」は北海道では“晩生の早”、東北地域では“早生”に属し、同熟期の標準品種と比較して、乾物中のTDN含量が2~2.5ポイント高い。TDN収量は北海道では同等で、東北地方ではやや高く、初期生育、耐倒伏性およびすす紋病抵抗性に優れている。

  • キーワード:トウモロコシ、サイレージ、品種、TDN、消化性、雌穂、飼料作物育種
  • 担当:北海道農研・寒地飼料作物育種研究チーム
  • 連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畜産草地、畜産草地
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

最近価格が高騰している購入濃厚飼料を節減するためには高品質な自給飼料の生産拡大が不可欠であり、トウモロコシに関しても栄養価の一層の向上を図ることが重要である。トウモロコシのTDN含量の向上により、その給与割合を高めたり、飼料設計をより柔軟に行うことが可能になる等の効果が期待される。そこで、北海道の道央・道南地域および東北地方に適し、TDN含量が高く、初期生育、耐倒伏性、すす紋病抵抗性等に優れる安定・多収品 種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「北交65号」は、Ho102×Ho95の単交雑一代雑種である。
  • 熟期は、北海道では「35G86」並の“晩生の早”に属し、東北地域では「36B08」並の“早生”に属する。絹糸抽出期は 「35G86」より1日早く「36B08」並か1日遅い。収穫時の乾物率は北海道では「35G86」および「36B08」と同程度であるが、東北地域では 「36B08」よりやや低い(表1)。
  • 発芽期は「35G86」より1日早く「36B08」並か1日早い。初期生育は「36B08」および「35G86」より優れている(表1)。
  • 耐倒伏性は「35G86」より強く「36B08」並である(表1)。
  • すす紋病抵抗性およびごま葉枯病抵抗性は、いずれも「36B08」よりやや弱いが「35G86」並で「3540」より強い(表2)。
  • 酵素法による高消化性繊維の割合(Oa/OCW)、乾物中のデンプンおよび粗脂肪含量は、いずれも「35G86」および「36B08」より高い(図1)。これらの飼料成分から推定したTDN含量は北海道では66.3%、東北地域では70.2%で、「35G86」より約2.5ポイント高く「36B08」より約2ポイント高い(表1)。
  • 乾物総重の平均値は、北海道では「35G86」および「36B08」よりそれぞれ5%および3%低く、東北地域では「36B08」より 2%高い。TDN収量は北海道では「35G86」および「36B08」と同程度で、東北地域では「36B08」より5%高い。乾雌穂重割合は、 「35G86」よりやや高く「36B08」並かやや高い(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 適地は、北海道の道央中部(上川を除く)、道央南部および道南地域、ならびに東北地域の青森県、岩手県および宮城県である。
  • 普及見込み面積は800 haである。
  • 栽植密度はアール当たり700~780本程度とする。

具体的データ

表1 「北交65号」の特性概要1

 

図1 「北交65号」の飼料成分図2 「北交65号」の雌穂および草姿

 

表2 「北交65号」の病害抵抗性1

その他

  • 研究課題名:大規模草地・飼料畑の活用のための高TDN飼料作物品種の育成
  • 課題ID:212-c
  • 予算区分:基盤、委託プロ(えさプロ)
  • 研究期間:2001~2007年度
  • 研究担当者:濃沼圭一、三木一嘉、榎 宏征、斉藤修平