十勝地域の畑輪作体系における作物生産のエネルギー収支

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要約

十勝地域の一般的な栽培体系では、化石燃料や資材の消費に伴うエネルギー投入量は1年あたり20.7~33.0GJ/haであるのに対し、収穫部のバイオマス生産に伴うエネルギー産出量は25.6~252.3GJ/haである。収穫部バイオマスについて、テンサイやバレイショはエネルギー産出/投入比および正味エネルギー収量が高く、エネルギー生産効率が高い。

  • キーワード:畑作、バイオマス、エネルギー収支、化石燃料
  • 担当:北海道農研・寒地温暖化研究チーム
  • 連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・生産環境、バイオマス
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

わが国の農業生産活動の多くは、化石燃料や肥料、農薬等資材の投入を前提として成立している。しかしながら、化石資源の保全、温 室効果ガスの排出削減、さらには農業系バイオマスを原料としたバイオ燃料の効率的生産の観点から、エネルギー生産効率が高い農業生産体系の構築が必要とされている。省エネ型栽培技術の開発に資するため、十勝地域の現行畑作生産体系における秋まきコムギ、テンサイ、アズキ、バレイショ生産について、栽培試験や統計データを用いた推計により、それらの収支をエネルギー投入・産出構造から明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 圃場作業、収穫物のトラック輸送、コムギの機械乾燥など、燃料消費作業におけるエネルギー投入量は、1年あたり6.1 (アズキ)~11.5 (秋まきコムギ) GJ/haである(図1)。
  • 耕起作業(砕土・整地、プラウ)に対するエネルギー投入量は1年あたり2.7 GJ/haであり、化石燃料消費に由来する投入エネルギー量の23~44%を占める(図1)。
  • 資材(肥料、農薬、農業機械)消費に伴うエネルギー投入量(これらの資材の製造、輸送に要するエネルギー量)は、1年あたり11.0 (秋まきコムギ)~24.4 (テンサイ) GJ/haである(表1)。
  • 総エネルギー投入量は、1年あたり20.7 (アズキ)~33.0 (テンサイ) GJ/haとなる(表1)。
  • 収穫部バイオマスのエネルギー産出量はテンサイ(252.3 GJ/ha)やバレイショ(155.8 GJ/ha)で大きい(表1)。一方、残さ(地上部)バイオマスのエネルギー産出量はテンサイ(93.8 GJ/ha)や秋まきコムギ(68.8 GJ/ha)で大きい。収穫部と残さのバイオマス生産による総産出エネルギー量は、テンサイ(346.1 GJ/ha)で大きい。
  • 収穫部バイオマス生産に関するエネルギー産出/投入比および正味エネルギー収量はテンサイ、つづいてバレイショで大きい(表1)。

成果の活用面・留意点

  • バイオ燃料作物の生産等に必要な省エネ型栽培技術の開発や作物の選定などにおいて、LCA評価等のための基礎資料として利用できる。
  • 各作物バイオマス(収穫部、残さ)の栽培・輸送が対象であり、バイオ燃料生産までのエネルギー収支を対象としたものではない。また、種子生産に伴うエネルギー投入量は考慮していない。
  • 十勝地域の標準的な生産規模(1戸あたりの栽培面積が30ha程度)を想定して得られたデータである。

具体的データ

図1 化石燃料消費に伴うエネルギー投入量

 

表1 十勝地域の慣行栽培体系における1年あたりのエネルギー収支

その他

  • 研究課題名:畑輪作体系におけるエタノール生産システムのLCA評価
  • 課題ID:411-a
  • 予算区分:基盤、委託プロ(バイオマス(モデル))
  • 研究期間:2007~2011年度
  • 研究担当者:古賀伸久
  • 発表論文等:N. Koga (2008) Agric. Ecosyst. Environ. 125: 101-110