水稲第8染色体の穂ばらみ期耐冷性遺伝子とその選抜マーカー
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要約
耐冷性極強の水稲中間母本系統「北海PL9」は第8染色体短腕に新規の穂ばらみ期耐冷性遺伝子(qCTB8 )をもつ。qCTB8 の候補領域は1.7cM区間内に推定され、アガロースゲル電気泳動で検出可能なSSRマーカーを用いて選抜できる。
- キーワード:水稲、穂ばらみ期耐冷性、DNAマーカー、北海PL9、qCTB8
- 担当:北海道農研・低温耐性研究チーム
- 連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
- 区分:北海道農業・生物工学、作物
- 分類:研究・普及
背景・ねらい
夏季の低温による冷害克服のため、育種による水稲の穂ばらみ期耐冷性向上が求められている。量的形質である穂ばらみ期耐冷性を簡便かつ効率よく改良するためには、DNAマーカーを利用して耐冷性遺伝子の導入・集積や劣悪形質との連鎖の解消を図ることが有効である。そこで、耐冷性極強の中間母本系統「北海PL9」がもつ穂ばらみ期耐冷性遺伝子をDNAマーカー連鎖地図上へ位置づけるとともに、育種選抜のためのマーカー開発を行う。
成果の内容・特徴
- 「北海PL9」(耐冷性極強)は第8染色体短腕に穂ばらみ期耐冷性遺伝子(qCTB8 )をもっている。qCTB8 はSSRマーカーRM5647とPLA61間の1.7cM区間(日本晴ゲノム塩基配列では193kbpに相当)に座乗すると推定される(図1)。
- qCTB8 のマーカーを利用することにより、穂ばらみ期耐冷性の選抜が可能である。「北海PL9」(耐冷性極強)と「北海287号」(耐冷性やや強)のF2集団において、マーカー選抜されたqCTB8 をホモでもつ個体ともたない個体間では、耐冷性検定における稔実率に2ヶ年とも約18%の差が観察される(図2)。
- qCTB8 のマーカーはPCR増幅産物のアガロースゲル電気泳動によって多型検出可能である。
成果の活用面・留意点
- 本研究のSSRマーカーは「北海PL9」を供与親とした穂ばらみ期耐冷性のマーカー育種に利用できる。
- 図1においてPLAから始まる名前のついたマーカーはKurokiら(2007, Theor. Appl. Genet.
115:593-600)、RMから始まる名前のついたマーカーはMcCouchら(2002, DNA Res.
9:199-207)によって開発・公開されている。
- 「北海PL9」の種子は問い合わせにより品種育成用途で分譲可能である。
具体的データ


その他
- 研究課題名:作物の低温耐性等を高める代謝物質の機能解明とDNAマーカーを利用した育種素材の開発
- 予算区分:委託プロ(ミュータントパネル、QTL遺伝子)
- 研究期間:2004~2007年度
- 研究担当者:黒木慎、斎藤浩二、松葉修一、横上晴郁、清水博之、安東郁男(作物研)、佐藤裕
- 発表論文等:Kuroki M et al. (2007) Theor. Appl. Genet. 115(5):593-600