フルオープンハウスの導入による暑熱作業環境の改善

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要約

天井部フィルムを開放できるフルオープンハウスでは、夏季のハウス内気温の過度な上昇が抑えられ、従来型ハウスより5℃以上低く抑えられる場合がある。熱中症の発症が危惧されるWBGTが28℃を超える時間も約1/3に短縮され、作業環境が改善される。

  • キーワード:フルオープンハウス、作業環境、暑熱対策、WBGT(湿球黒球温度)
  • 担当:北海道農研・北海道水田輪作研究チーム
  • 連絡先:電話011-857-9260、電子メール seika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・水田・園芸作
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

近年北海道内においても、パイプハウスを利用した施設園芸が盛んである。温暖な地域に比べて夜温が低く日射量が多い夏季は、糖度 の高い果菜類の生産が見込まれる。しかし日中はハウス内が高温になり易く、暑熱環境下の収穫や管理作業では熱中症の発症も危惧される。そこで暑熱対策とし て、天井部のフィルムを開放できるフルオープンハウス(以下、FOハウス)を導入した場合の効果を、側方換気のみの従来型ハウスと比較して検討する。また 導入コスト低減のため、既存のハウスを自家施工によりFOハウスに改造する場合の施工の難易、材料費を確認する。

成果の内容・特徴

  • FOハウス内気温の上昇は、天井部の開放によって外気温近くにとどまる。その結果、晴天で日射の強い条件では、従来型ハウスより5℃以上(今回の計測では最大9℃)気温が低く抑えられる場合がある(図2)。ハウス内の気温が30℃を超える延べ時間は、従来型ハウスで240時間に達するが、FOハウスでは72~82時間にとどまる(表1)。
  • 熱中症予防の指標となるWBGTで見ると、厚生労働省が「果物や野菜を摘む」の作業について熱に順化した人を対象に示す基準値:28℃を超える延べ時間が、従来型ハウスの143時間に対しFOハウスでは43~51時間となり、約1/3に短縮される(表1)。
  • WBGTが28℃を超える時間の割合は、日中10~14時台にかけて、従来型ハウスではおよそ30~40%超に達するが、FOハウスでは10%程度である(図3)。
  • 既存のパイプハウスを自家施工でFOハウスに改造することにも大きな困難はなく、改造に要する材料費は、間口6m、奥行50mのサイズのハウスで約20万円である。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、新十津川町のJAピンネ実験農場内に並べて設置したFOハウス2棟と従来型ハウス1棟(図1)について、FOハウスの天井部の開放をほぼ毎日連続して行った2007年6月17日~9月2日の78日間のうち、雨天等によりFOハウスの天井部を開放しなかった15日を除く63日の環境計測記録をとりまとめた結果である。
  • FOハウスは、天井部のフィルムを棟で固定する必要がある。このため自家施工による導入にあたっては、高所作業の安全に十分に配慮する必要がある。
  • FOハウスの天井部を開放しない日中および夜間のハウス内気温は、従来型ハウスとほぼ同じであり、FOハウスの保温性が従来型ハウスより劣ることはない。

具体的データ

図1 調査対象としたパイプハウス

 

表1 平均日最高気温と暑熱環境となる延べ時間

 

図2 気温推移の計測例(6/25)

 

図3 WBGT が28℃を超える時間の割合

その他

  • 研究課題名:寒地における高品質周年栽培のための園芸施設の環境制御技術の開発
  • 課題ID:211-k
  • 予算区分:産学官連携(ポジティブリスト対応)
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:向弘之、松田周、古原洋(道立中央農試)、福川英司(道立花野技セ)、小林靖典(JAピンネ)、水田康雄(JAピンネ)