放牧生産乳を原料とするチーズの特性と試験販売での評価

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要約

放牧飼養された乳牛から生産された乳を原料とするナチュラルチーズ(白カビ熟成タイプ)は、色、香り、柔らかさで一般牛乳を原料とするものと差別化でき、特徴ある商品開発を目指す小規模工房にとって、魅力ある商品開発の素材として期待できる。

  • キーワード:放牧、乳、乳製品、ナチュラルチーズ、小規模乳製品工房
  • 担当:北海道農研・集約放牧研究チーム、北海道農業経営研究チーム
  • 連絡先:電話011-857-9260、電子メール seika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畜産草地、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

放牧生産乳から製造したナチュラルチーズの特性を明らかにし、その評価を得ることで、小規模工房および農家工房で製造への要望の高い、地域の特徴ある乳製品製造の機会を広げることを目指す。

成果の内容・特徴

  • 放牧飼養体系(6月中旬の放牧草の推定乾物採食量約14kg程度)で生産された乳(以下放牧生産乳)を原料とするナチュラルチーズ(白カビ熟成タイプ、写真)は、黄色が濃く、香りに関連する成分の量、テクスチャの柔らかさに特徴がある(表1)。
  • 放牧生産乳を原料としたチーズは、放牧の特徴を示すと考えられる色(b*値)と、放牧生産乳のチーズの香気に関連すると考え られる成分であるphyt-1-eneの数値が、5月初旬の放牧開始から10日後頃から上昇する。また、秋期は放牧終了直前の10月末頃から低下する。(図1)。
  • 官能評価試験では、外観、香り、食感の各項目について、放牧生産乳を原料とするチーズと放牧なしで生産された乳を原料とするチーズの差違が90%を超える高い割合で認識され、両者の差別化は可能である。(表2)。
  • 販売試験(2007年販売個数合計:約2400個)を行った小規模工房の聞き取り調査の結果では、①季節感をアピールできること、②製 法・施設を変えずにアイテムを増やせること、③プレミアム感があり他の商品よりリピート客やみやげ物用需要が多いこと等の、販売促進および企業イメージの 向上につながる多くのメリットを感じており、放牧生産乳を原料とするチーズは、高付加価値商品としての活用が期待できる。

成果の活用面・留意点

  • 地域の小規模乳製品製造工房および農家工房などで、放牧生産乳を原料とする乳製品を製造・販売する際の基礎情報として活用できる。
  • 本成果は、北海道十勝地域で得られた結果に基づいている。放牧生産乳およびその乳製品の特性は、各地域、各酪農家で異なるものと考えられる。
  • 放牧生産乳を用いて製品を製造するためには、原料乳生産農家、乳集出荷関係団体などとの連携と調整が必要である。

具体的データ

写真 放牧生産乳を原料にして試作した白カビ熟成タイプのナチュラルチーズ

 

表1 放牧生産乳と放牧なしの乳を原料とするチーズ(白カビ熟成タイプ)の特性比較

 

図1  放牧開始期および放牧終了期にかけての放牧牛乳を原料とするナチュラルチーズのb*値およびphyt-1-eneの変化

 

表2 放牧生産乳チーズの官能評価試験の結果

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした健全な家畜飼養のための放牧技術の開発
  • 課題ID:212-d
  • 予算区分:交付金プロ(集約放牧)、基盤
  • 研究期間:2003~2007年度
  • 研究担当者:松村哲夫、上田靖子、若林勝史、朝隈貞樹、秋山典昭、篠田 満