飼料用トウモロコシと濃厚飼料を混合調製した細断ロールベールサイレージの特性

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要約

収穫したトウモロコシと濃厚飼料を粗蛋白質含量が15%程度となるように混合して細断型ロールベーラで調製したサイレージは、翌夏まで良好な発酵品質を保ち栄養価の損失は小さい。冬でも凍結せず作業性に優れ、開封後は発熱しにくいという特性もある。

  • キーワード:飼料用トウモロコシ、細断型ロールベーラ、サイレージ、飼料評価
  • 担当:北海道農研・自給飼料酪農研究チーム、集約放牧研究チーム
  • 連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畜産草地、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

飼料用トウモロコシの収穫時に濃厚飼料と混合して細断型ロールベーラ(RB)により調製したサイレージは、開封して直ちに給与で き流通にも適した飼料になりえる。しかしその飼料特性には不明な点があり、とくに粗蛋白質(CP)含量を搾乳牛用飼料として適する水準にまで高めると、牧 草と濃厚飼料の混合調製時にみられるような可溶性窒素の増加にともなう発酵品質の低下が懸念される。そこで本手法により調製した細断ロールベールサイレー ジの飼料特性を明らかにし、搾乳牛用飼料としての有用性を検討する。

成果の内容・特徴

  • 飼料用トウモロコシ(黄熟初期、乾物率25%)と乳牛用配合飼料(乳配:乾物中TDN79%、CP20%)や大豆粕(同 TDN87%、CP59%)を、トウモロコシの乾物比を6割として混合し細断型RBへ投入、調製すると、細断ロールベールの乾物重量および乾物密度はトウ モロコシのみのロール(対照区)より大きく、排汁損失は著しく抑制される。冬季には、対照区でみられる著しい凍結が回避でき開封作業は容易である(表1)。
  • 乳配と混合してCP含量を10%程度とする場合(乳配混合区)だけでなく、乳配の一部を大豆粕に置き換えてCP含量が15%程度となるように調製しても(乳配・大豆粕混合区)、翌夏まで貯蔵した細断ロールベールサイレージの発酵品質は良好である(表2)。
  • 翌夏まで貯蔵しても、混合調製した細断ロールベールサイレージの栄養価が大きく損なわれることはない(表3)。
  • 混合調製した細断ロールベールサイレージは、対照区に比べて開封後の発熱が大きく抑制される(図1)。
  • 以上のように、収穫したトウモロコシと濃厚飼料を混合調製した細断ロールベールサイレージは、冬季の作業性に優れ、開封後は発熱しにくいという特性があり、CP含量を15%程度に設定しても、懸念されるような発酵品質の低下や栄養価の損失は翌夏でもみられない。

成果の活用面・留意点

  • 固定サイロを持たない経営で利用できる。またトウモロコシの非生産農家・地域へサイレージを流通させる手法として応用できる。
  • 混合する蛋白質飼料の種類によっては本成果と結果が異なる可能性がある。
  • 給与に際しては、搾乳牛の栄養要求に適合させて、かつ消化器病などを引き起こさないための飼料設計を行う。切断長の長い繊維質飼料などの給与が必要な場合がある。

具体的データ

表1.混合調製細断ロールベールの物理的指標 表2.混合調製細断ロールベールサイレージの成分および発酵品質

 

 

表3.混合調製細断ロールベールサイレージの消化率およびTDN含量 図1.混合調製細断ロールベールサイレージの開封後における温度変化

 

その他

  • 研究課題名:外部支援組織に対応した寒地向き高品質TMRサイレージ調製技術
  • 課題ID:212-g
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2007年度
  • 研究担当者:青木康浩、大下友子、秋山典昭、宮地慎