飽水土壌溶液を用いた土壌硝酸態窒素の簡易分析法

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要約

飽水土壌の調製と土壌溶液の採取により供試土壌の水分を考慮せずに土壌硝酸態窒素を分析できる。本法の値は精密分析(KCl抽出法)で得られる値と高い相関関係があり、現場に対応した簡易な分析法として利用できる。

  • キーワード:飽水土壌溶液、土壌硝酸態窒素、簡易分析、土壌診断
  • 担当:北海道農研・根圏域研究チーム
  • 連絡先:電話011-857-9260、電子メール seika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・生産環境、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

土壌からの無機態窒素の供給量を現場で簡易に測定できれば、経時的な窒素診断が可能になる。そこで、飽水土壌溶液を採取して、その硝酸態窒素(NO3-N)を測定する簡易分析法が利用可能であるかどうかを、精密分析法であるKCl抽出法(土10 gを10 % KCl溶液100 mLで抽出)と比較して検討した。本法は、生土に少量の水を加え飽水土壌の状態にして採取した飽水土壌溶液を用いるのが特徴である。

成果の内容・特徴

  • 飽水土壌とは土に水を加えつつ捏ねていき、土が光を反射して光沢を持つ点まで加水した状態をいう。飽水土壌の調製には視覚や触感を頼りにするので、あらかじめ見本を作成する。容器に生土を取り、水を少しずつ加えながらかき混ぜ、飽水土壌の状態になったら終点とする(図1)。これをポリ袋に詰めて、土壌の柔らかさ、触感などの見本とする。
  • ポリ袋に生土約70 gを取り飽水状態まで水を加えて捏ねた後、セラミック管と注射筒を用いて土壌溶液を吸引、採取する(図2)。これは供試土壌の水分測定を必要とせず、また、秤やシリンダーなどの器具を用いない現場対応型の試料採取法である。
  • 飽水土壌溶液のNO3-N濃度は、KCl抽出による土壌NO3-N濃度との間に、作物の生育期間に係わらず高い相関関係があり、それは褐色低地土でやや異なるものの多湿黒ボク土、灰色台地土で同じである(図3)。また、測定に簡易法であるRQフレックス法が利用できる(図4)。
  • 供試した生土の含水比は0.19~0.41であり、調整後の飽水土壌の含水比は0.44~0.61である(表1)。
  • 以上より、飽水土壌溶液の採取により、供試土壌の水分を考慮することなく現場で簡易に土壌NO3-N濃度の測定が可能であり、y = 0.0512 x - 0.318(y:KCl抽出のNO3-N、x:飽水土壌溶液のNO3-N)により乾土100g当りmgに変換できる。

成果の活用面・留意点

  • 飽水土壌溶液法は、現場に適用可能な土壌NO3-Nの簡易分析法として、畑地土壌における無機態窒素診断に利用できる。
  • 現場での利用に当たっては、同じ基準で飽水土壌を作成するために事前のトレーニングが必要である。
  • 供試した多湿黒ボク土、褐色低地土、灰色台地土以外の土壌への適応性を検討する必要がある。

具体的データ

図1 飽水土壌の見本および用意するもの

 

図2 飽水土壌溶液採取の手順

 

図3 飽水土壌溶液とKCl抽出液のNO3-Nの比較

 

図4 オートアナライザー法とRQフレックス法の比較

 

表1 供試した生土および調整後の飽水土壌の含水比

 

その他

  • 研究課題名:根圏域における植-微生物相互作用と微生物等の機能の解明
  • 課題ID:214-i
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2005~2007年度
  • 研究担当者:建部雅子、岡﨑圭毅、岡 紀邦、水落勁美(北海道農研フェロー)