Aphanomyces cochlioides 遊走子接種によるテンサイ苗立枯病抵抗性検定手法

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要約

播種2週間後のテンサイ幼苗の株元にA. cochlioides の遊走子を灌注接種することで、苗立枯病を発生させることができ、品種の苗立枯病抵抗性を簡便に検定できる。

  • キーワード:テンサイ、苗立枯病、A. cochlioides、遊走子、抵抗性検定
  • 担当:北海道農研・寒地バイオマス研究チーム
  • 連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畑作、作物
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

テンサイは栽培コストの低減・省力化を実現するため、使用薬剤の低減、直播栽培の普及が強く求められている。苗立枯病は、発芽か ら幼苗期にかけて発生し、病徴が進展すると倒伏枯死し、直播栽培においてはそのまま欠株となるため、抵抗性品種の利用が重要である。本病の抵抗性検定手法 については、汚染土壌に播種する手法が報告されているが、検定精度の向上が難しく、健全土壌における出芽率を算出する必要があるなど、多大な労力を必要と する。そこで、本研究では、テンサイ苗立枯病抵抗性品種を育成するために、北海道で発生が多く、主に出芽後に苗立枯病を引き起こすA. cochlioides による苗立枯病について、出芽後の個体に遊走子を接種する簡便な抵抗性検定手法を開発する

成果の内容・特徴

  • オートクレーブ滅菌した土250gを充填したピートモス製ポット (直径8cm,深さ10cm)に殺菌処理した種子を36粒播種し、人工気象室内(明期16時間・25℃,暗期8時間・20℃)で2週間育成した幼苗の株元にA. cochlioides の遊走子を灌注接種にする。接種3週間後に、0(無)~5(甚)の6段階で苗立枯病の発病程度を調査する(図1)。
  • 接種濃度を1ポット当たり遊走子12,500個(以下12,500/pot)以上とした場合、発病指数がそれ以下の接種濃度の場合に比べて高い。また、反復間差についても小さく、安定した発病がみられる(表1)。
  • 接種濃度を12,500/potとした場合、苗立枯病の発病指数には明瞭な系統間差が認められる。「品種A」、「モノホマ レ」および「品種B」の発病指数は、反復毎の変動は小さく、品種間差の変動もみられないことから、本手法により品種の苗立枯病抵抗性を簡便に検定できる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 試験精度を高めるため、接種の際には生育不良個体を取り除き、生育ステージを揃える。
  • 抵抗性評価の基準品種を選定する必要がある。

具体的データ

図1 A. cochlioides遊走子接種による立枯病抵抗性検定フロー

 

表1. 接種濃度と苗立枯病の発病程度

 

表2.遊走子接種による苗立枯病の発病指数

その他

  • 研究課題名:てん菜の省力・低コスト栽培のための品種の育成
  • 課題ID:211-f
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:2006~2007年度
  • 研究担当者:岡崎和之、田口和憲、高橋宙之、阿部英幸
  • 発表論文等:岡崎ら(2006) てん菜研究会報48:25-27 他