温湯除雄を用いたダッタンソバの簡易な交配方法

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要約

ダッタンソバは、交配の前日午後に最頂花房の蕾を44℃、3分間の温湯処理で除雄し、翌朝に開花した花に人工授粉を行うことにより、高率に雑種種子が得られる。

  • キーワード:ダッタンソバ、温湯除雄、交配、自殖性作物
  • 担当:北海道農研・寒地地域特産研究チーム、機能性利用研究北海道サブチーム
  • 連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畑作、作物
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

ダッタンソバは、毛細血管を強化する機能を有するルチンを子実中に多量に蓄積し、昨今の健康食志向を背景として、人気が高まって いる。2007年には、北農研で育成した「北海T8号」が、北海道の優良品種に認定された。ダッタンソバは自殖性作物であり、これまで、導入、純系選抜、 染色体倍加、突然変異育種などにより品種改良が行われてきたが、主要作物で広く行われている交雑育種は、ほとんど行われていない。この背景の一つには、 ダッタンソバの花器が非常に小さく、ピンセットによる除雄操作が困難であり、また、交配の成功率が非常に低かったという技術上の問題があった。今後、交雑 育種により積極的に優良形質の集積を図っていく上では、簡易で実用的な除雄・交配方法の開発が不可欠である。

成果の内容・特徴

  • ダッタンソバの除雄は、翌日に開花する蕾を含む最頂花房を、恒温水槽に浸漬する温湯処理で行う。交配には、処理翌朝に開花した花を用いる。
  • 42℃・8分間、43℃・5分間、44℃・3分間以上の温湯処理により、自殖での結実率がほぼ0%となる(表1)。
  • 人工授粉により結実が促されるが、44℃・3分間の温湯処理において最も結実率が高く、交配花数の半分程度で結実が得られる(表2)。
  • 44℃・3分間の温湯処理は、様々な品種・系統への適用性も高く、ほぼ確実な除雄と人工授粉による結実が得られる(表3)。
  • 以上の温湯処理と人工授粉により雑種が得られ(表4)、交雑育種が可能となる。

成果の活用面・留意点

  • ごく少数ながら自殖種子が残る可能性があるため、F1の形態やF2の形質の分離を観察し、自殖後代を適切に排除する必要がある。
  • 植物体を養成する際の室温が高い場合、温湯処理後の開花が抑制され、人工授粉が困難となるため、概ね25℃以下の冷涼な温度で植物体を養成する。

具体的データ

表1.温湯処理温度・時間と自殖による結実(供試品種:「北海T8号」)  表2.温湯処理後の人工授粉による結実程度(供試品種:「北海T8号」、雄親:「北海T10号」)

表3.44℃・3分間の温湯処理の除雄程度及び人工授粉による結実程度  表4.F1 または S1世代における子葉色

その他

  • 研究課題名:寒地における地域特産作物の優良品種の育成及び利用技術の開発
  • 課題ID:311-f
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:2006~2007年度
  • 研究担当者:六笠裕治、鈴木達郎、本田裕
  • 発表論文等:Mukasa Y. et al. (2007) Euphytica 156: 319-326