小麦胚芽を用いたγ-アミノ酪酸(GABA)の効率的生産法
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要約
小麦胚芽をGABA合成酵素源とし、グルタミン酸ナトリウム量、ピリドキサルリン酸量、反応液pH、反応温度および反応時間を最適化することによりGABAを効率的に合成できる。合成したGABAをスプラウトへ施用することで、GABA高含有スプラウトを生産できる。
- キーワード:γ-アミノ酪酸(GABA)、小麦胚芽、スプラウト
- 担当:北海道農研・野菜・茶機能性研究チーム、機能性利用研究北海道サブチーム、パン用小麦研究チーム、寒地地域特産研究チーム、寒地バイオマス研究チーム
- 連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
- 区分:北海道農業・畑作、野菜茶業・野菜品質・機能性
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
γ-アミノ酪酸(Gamma Amino Butyric
Acid(GABA))は、神経伝達物質作用を示すアミノ酸であり、生体内ではグルタミン酸脱炭酸酵素(GABA合成酵素)によってグルタミン酸から生合
成される。このGABAには血圧降下作用、精神の安定化作用(抗ストレス作用)等の生理作用が報告されている。現在GABA関連食品が数多く市販されてい
るが、その原料価格は高く、GABAは高額で取引されているのが現状である。そこで、GABA合成酵素活性があるとされる小麦製粉工程で得られる小麦胚芽
を利用して、従来品より安価なGABAの生産技術を開発し、生産したGABAの施用によるGABA高含有野菜スプラウトを生産する。
成果の内容・特徴
- GABA生成率は市販小麦胚芽が99.7%と最も高く、次いで小ブスマ94.3%、米ぬか69.7%である。GABAの生成
量はグルタミン酸量に依存し、100 g/l(グルタミン酸Naとして114.9 g/l)添加することによって、66.2
g/lのGABAが得られる。またGABAの生成量はピリドキサルリン酸量に依存し、100
mg/l以上添加することによって、99%以上の生成率が得られる(表1)。
- 小麦胚芽中のGABA合成酵素活性は反応液pH5.8で最も高く、反応温度40℃で最も高い(表2)。
- GABAの生成率は反応3~4時間でほぼ100%となり約45 g/lのGABAが得られる。その後、生成率はほぼ100%を維持するが反応7時間以上では反応液の酸化、雑菌の増殖等による反応液の色、風味の劣化が起こる(表3)。
- 水耕栽培のカイワレダイコン、ブロッコリー、ソバおよびダッタンソバのスプラウトは給水のみの場合でも1~10
mg/100gFWのGABAを含有するが、10 g/lの濃度に調整したGABA液を50 ml、16時間水耕施用することで約40~80
mg/100gFWに増加する(図1)。
成果の活用面・留意点
- 合成反応及びGABA液の分離に際し攪拌機、恒温器、遠心機等の機材が別途必要となる。
- 本成果におけるGABA生産に関わる原料コストはGABA1kgあたり3808円である。
具体的データ




その他
- 研究課題名: 野菜・茶の免疫調節作用、生活習慣病予防作用を持つ機能性成分の評価法と利用技術の開発
- 課題ID:312-b
- 予算区分:都市エリア事業
- 研究期間:2005~2007年度
- 研究担当者:瀧川重信、鈴木達郎、橋本直人、山内宏昭、遠藤千絵、斉藤勝一
- 発表論文等:鈴木ら(2007)「GABA、ビタミンU、タウリン、カルノシンTyr-Proおよび/またはL-カルニチンを高濃度に含有する食用植物体及びその製造方法」 特開2007-89572