スイートコーンの窒素吸収および糖含有率に対する堆肥施用の影響

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要約

堆肥施用によりスイートコーンが吸収する窒素の主体は土壌中で無機化された硝酸態窒素である。堆肥施用により熟期が早まり、収穫適期の子実糖含有率は堆肥施用、窒素施肥にかかわらず作物が吸収した窒素量に応じてほぼ決まる。

  • キーワード:堆肥、窒素、糖含有率、土壌硝酸態窒素、スイートコーン
  • 担当:北海道農研・根圏域研究チーム
  • 連絡先:電話011-857-9260、電子メール seika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・生産環境、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

堆肥窒素の作物への供給パターンは肥料窒素とは異なり、そのため作物品質への影響もまた異なる可能性がある。そこで、牛糞堆肥 (0, 2, 4 t/10a)と窒素施用量(N0, N12 kg/10a)を変えてスイートコーン(品種:おひさまコーン)を栽培し、肥料窒素のみを施用した場合と比べて堆肥を施用することが作物の窒素吸収を通し て子実の糖含有率に与える影響を明らかにしようとした。

成果の内容・特徴

  • 裸地土壌の硝酸態窒素(NO3-N)は、堆肥4 t / 10a施用で6月以降平均2.2 mg / 乾土100gと、窒素12 kg / 10a(基肥7+追肥5)施用の4.0 mg / 乾土100gより低めに推移する。栽培土壌のNO3-Nは作物による吸収にともない次第に低下し、収穫期には0.6 mg/乾土100g以下となる(図1)。
  • 堆肥施用から収穫までの裸地土壌NO3-Nの積算値(日平均値で表す)が高いほど窒素吸収量が高まることから、スイートコーンの窒素吸収は堆肥施用、無施用に係わらず基本的には土壌中に放出されたNO3-N量によって決まる(図2)。
  • スイートコーンの6月末の乾物重は窒素施肥の有無にかかわらず堆肥施用量が多いほど増加し(図3)、絹糸抽出期は堆肥施用によって早まる(表1)。
  • スイートコーンの窒素吸収量および雌穂重は堆肥および窒素施用量にともない増加し、糖含有率は低下する傾向がある。また、糖含有率の最も高い時期(収穫適期)は堆肥施用により早まる(表1)。
  • 糖含有率は窒素吸収量の増加にともない低下する傾向がある。そして、処理別に収穫適期の糖含有率の値を用いて両者の関係を比較すると、堆肥の施用、無施用の間で窒素吸収量と糖含有率との関係に違いは見られない(図4)。
  • 堆肥施用は熟期に影響を与えるので、品質成分への堆肥の影響を見るときは熟期を考慮する必要がある。
  • 以上より、堆肥施用によりスイートコーンが吸収する窒素の主体は土壌中で無機化された硝酸態窒素であり、子実の糖含有率は熟期を考慮すると堆肥施用、無施用に関わりなく窒素吸収量に応じてほぼ決まる。

成果の活用面・留意点

  • 堆肥などの有機物施用にともなう窒素減肥の施肥設計に対し、品質面での参考となる。
  • 供試堆肥は牛糞、稲わら主体の堆肥で、乾物率36~40%、C/N比8.4~10.4であり、無機態窒素を38.5~112.8 mg/100g含む。

具体的データ

図1 スイートコーン土壌のNO3-N濃度の推移(2007年) 図2 裸地土壌のNO3-N積算値(日平均値)とスイートコーンの窒素吸収量

 

表1 スイートコーン収量調査結果および絹糸抽出期(2007年)

 

図3 生育初期(6月26日)のスイートコーンの乾物重  図4 窒素吸収量と糖含有率との関係(2007年スイートコーン)糖含有率の最も高い時期の値を用いた

その他

  • 研究課題名:根圏域における植物-微生物相互作用と微生物等の機能の解明
  • 課題ID:214-i
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2005~2007年度
  • 研究担当者:建部雅子、岡﨑圭毅、岡 紀邦、唐澤敏彦