ラフィノース合成系酵素遺伝子の導入によるイネの低温耐性向上効果
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
ラフィノース合成の律速酵素であるガラクチノール合成酵素の働きをコムギ由来のガラクチノール合成酵素遺伝子を導入することで高めた形質転換イネは、ラフィノースの蓄積量が増大し、幼苗期の低温耐性と低温発芽性が向上する。
- キーワード:ラフィノース、ガラクチノール合成酵素遺伝子、低温耐性、形質転換イネ
- 担当:北海道農研・低温耐性研究チーム
- 連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
- 区分:北海道農業・生物工学
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
ラフィノースは、多くの植物種子に存在し、その成熟過程における乾燥耐性の獲得に重要な役割を持つとされるオリゴ糖である。ま
た、植物体においてはマメ科作物の越冬へ向けた貯蔵糖類として低温適応過程において蓄積することが知られている。ラフィノースは、ガラクチノールを基質と
して合成される。そこで、本研究ではラフィノース合成系の最初のステップに関与するガラクチノール合成酵素遺伝子を導入したイネ形質転換体を用いて、ラ
フィノースの低温耐性に対する効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
- マイクロアレイ解析の結果によれば、ガラクチノール合成酵素(GolS)遺伝子が、コムギの低温適応時に発現しており、単離されたコムギガラクチノール合成酵素遺伝子(TaGolS1,TaGolS2 )は、低温特異的なストレス応答発現を示す(図1)。
- コムギ由来TaGolS1 あるいはTaGolS2 が導入されたイネ幼苗(発芽後14日)の糖含量は、原品種の約9倍(ガラクチノール)及び約8倍(ラフィノース)の高い値を示す(図2)。
- 発芽後14日の幼苗に対し、5℃の低温処理を13.5日行った後、生育温度に戻し、その14日後における生存率を調査すると、原品種の生存率が33%であるのに対して、TaGolS 導入イネ系統GolS1-1及びGolS2-2では、80%~83%の高い生存率を示す(図3)。
- 13℃の低温下での発芽率を10日間調査するとTaGolS 導入イネ系統種子GolS2-6、GolS2-7及びGolS2-8は、原品種を上回る発芽性を示す(図4)。なお、25に℃おける発芽試験では、原品種とTaGolS 導入イネ系統の間に差は認められない。
- これらの結果は、蓄積したラフィノースがイネの低温耐性の向上効果を持つことを示す。
成果の活用面・留意点
- ラフィノース合成系酵素遺伝子を用いた低温耐性向上技術の開発に資する。
- 作物の低温耐性獲得機構の解明につながる。
具体的データ


その他