水田作地帯における担い手規模の将来予測

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要約

農地供給者数は水田作地帯>畑作・酪農地帯、逆に需要者数は水田作地帯<畑作・酪農地帯の関係にある。10年後の水田作地帯では農地余剰化を防ぐため、担い手が現面積の1.6倍化に及ぶ集積を図ることが求められるが、労働力は不足傾向にある。

  • キーワード:担い手、規模拡大、将来予測
  • 担当:北海道農研・北海道農業経営研究チーム
  • 連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・水田・園芸作
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

北海道農業では農家数減少進行の下、大規模階層が形成されてきているが、地域差も明瞭である。こうした中、大規模階層が安定的な担い手として展開しうるか、また農地を効率的に利用しうるかどうかが農業発展の課題となっている。特に、近年の水田作地帯では高齢化に伴う農家数減少が著しく、問題が深刻化している状況にある。
  そこで、大規模階層の担い手等に着目しつつ、水田作地帯における農業構造の将来動向を農業センサス個票組み替え集計によって明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 農地の供給者層と需要者層(担い手)の抽出(図1)
      農地供給者は同居農業後継者のいない経営主55~59歳、60歳以上の農家とし、農業者年金受給年齢到達(65歳以上)で離農とする。需要者は1経営規模が水田作地帯10ha以上、畑作地帯20ha以上、酪農地帯50ha以上、2かつ同居農業後継者がいる農家、及び後継者のいない農家でも経営主50歳未満の農家、とする。
  • 農地の供給者層の存在状況(表1)
      農地の供給者層は存在割合、面積シェアともに水田作地帯で高く、畑作、酪農地帯では水田作地帯の過半程度に過ぎない。同時に、面積シェアは将来の農地供給面積に直結しており、10年以内には水田作地帯における大量の農地供給が見込まれる。
  • 農地の需要者(担い手)層の存在状況と将来動向(表2)
      需要者=担い手の厚み・規模は水田作地帯<畑作・酪農地帯の関係にある。その存在割合は水田作地帯20%台に対し、畑作、酪農地帯では40~50%台を占める。経営規模も水田作地帯20~25haに対し、畑作地帯30ha台後半、酪農地帯では70ha台にある。
      前述の供給面積について、耕作放棄地を発生させずに担い手が全て引き受ける場合、現面積に対する集積農地割合は10年後に水田作地帯で60%前後、畑作、酪農地帯で20%前後となる。この結果、担い手規模は水田作地帯30~40ha、畑作地帯45~50ha、酪農地帯90haへの拡大となる。特に、水田作地帯では供給者層>需用者層の関係が強いことから、需要者=担い手による現面積の1.6倍化の集積が求められるのである。
  • 需要者(担い手)層の労働力保有状況(表3)
      3地帯ともに担い手は専従者が厚く確保されているが、水田作地帯では男子専従者2人以上の確保率が50%程度に留まっており、将来の経営規模=30~40haに対して労働力が不足傾向にある。

成果の活用面・留意点

  • 地域における農業施策立案の際に活用できる。
  • 法人(協業経営)は各地実態を踏まえ、将来予測に反映させていくことが必要になる。

具体的データ

図1 農地供給者層,農地需要者層の抽出

 

 

表1  農地の供給者(出し手)層

 

 

 

表2  農地の需要者(担い手)層

 

 

表3  担い手層の労働力保有状況

その他

  • 研究課題名:主要農業類型別農業構造の動向解析に基づく技術開発方向の提示
  • 課題ID:211-a
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:2006~2007年度
  • 研究担当者:細山隆夫
  • 発表論文等:細山(2006)2007年度農業問題研究学会秋期大会、ミニシンポジウム資料、P72-84