北海道地域向きの粉質米新品種候補系統「北海303号」
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要約
「北海303号」は北海道での熟期が“中生の早“に属する粉質米系統である。製粉した米粉の粒子が細かく損傷デンプンの割合が少ないため、パン用などの米粉原料として有望である。
- キーワード:イネ、粉質米、米粉
- 担当:北海道農研・低コスト稲育種研究北海道サブチーム、特命チーム員(米品質研究チーム)
- 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
- 区分:作物、北海道農業・水田・園芸作
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
国内食料自給率向上のため、耕作放棄水田等への非主食用米の作付けが注目されている。小麦粉代替となる新規米粉は飼料米と共に非主食用米の重要な用途である。米粉をパン、麺、洋菓子用等の小麦粉代替として利用するためには、従来の米粉より粒子が細かく、デンプン損傷が少ないことが必要である。近年、気流粉砕機による微粉砕技術が開発され、このような要件を満たす米粉の製造が可能になったが、比較的多額の設備投資が必要となることなどから、未だ広く普及しているとは言えない。このため、実需場面では気流粉砕機以外の粉砕機でも微粉砕できる特性をもった米が求められている。これまでに、玄米が柔らかく砕けやすい特性をもつ粉質米が突然変異で生じることが報告されている。粉質米はその特性から、一般米よりも広範な粉砕法で微粉砕できることが期待される。また、新規特性をもった米粉の開発や製粉コスト低減の可能性もある。現在、研究材料としての粉質米系統は存在するが、登録品種はない。そこで、北海道での栽培に適した粉質米品種の育成を行う。
成果の内容・特徴
- 水稲「北海303号」は、「ほしのゆめ」の種子ガンマ線照射後代から育成された粉質米系統である。胚乳の表層は硝子質状で、内部の大部分は不透明な白色である(図1)。
- 育成地における出穂期および成熟期は「ほしのゆめ」よりやや早い“中生の早”である(表1)。
- 玄米または白米を同一方法で粉砕した場合、「北海303号」の方が「ほしのゆめ」より米粉の粒径が細かく、損傷デンプン割合が少ない(表2)。
- 粗玄米の収量は、「ほしのゆめ」より約15%少ない(表1)。
- 白米アミロース含有率は「ほしのゆめ」より3ポイント程度低い(表1)。
- 穂ばらみ期耐冷性は「ほしのゆめ」並の“強”である(表1)。
- いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pia,Pii,Pik”と推定され、いもち病圃場抵抗性は、葉いもちは「ほしのゆめ」よりやや強い“やや弱”、穂いもちは「ほしのゆめ」並の“やや弱”である(表1)。
成果の活用面・留意点
- 小麦粉代替可能な米粉の原料として利用が期待できる。
- いもち病抵抗性は十分ではないので、適正な防除に努める。
- 耐倒伏性は強くないので、極端な多肥栽培は避ける。
- 今後は実用化に向けた大規模な栽培実証試験を行い、得られた生産物を用いて実規模での実需評価試験を実施する。
具体的データ




その他
- 研究課題名:直播適性に優れ、実需者ニーズに対応した低コスト業務用水稲品種の育成
- 課題ID:311-a
- 予算区分:基盤、委託プロ(加工)
- 研究期間:1999~2008年度
- 研究担当者:清水博之、横上晴郁、松葉修一、黒木慎、安東郁男、荒木均