越冬性と収量性に優れる土壌凍結地帯向き集約放牧用メドウフェスク「北海15号」

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

メドウフェスク「北海15号」は雪腐病抵抗性の向上に伴い、既存品種より越冬性が著しく改善されている。また短草・多回刈り乾物収量は「ハルサカエ」より7%多収で、とくに春季と秋季に優れる。北海道の土壌凍結地帯に適し、集約放牧に利用できる。

  • キーワード:メドウフェスク、集約放牧、越冬性、雪腐病、季節生産性
  • 担当:北海道農研・寒地飼料作物育種研究チーム、道立根釧農試・作物科
  • 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畜産草地、畜産草地
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

北海道の土壌凍結地帯では短草管理で高栄養を維持できる集約放牧用品種として、現在メドウフェスクの「ハルサカエ」の利用が図られている。しかし、「ハルサカエ」は、元来、積雪地において採草利用を主体に育成された品種であり、越冬性や短草管理での収量性などさらなる改良が必要である。そこでより高度に安定した越冬性を備え、季節生産性に優れる品種を育成し、土壌凍結地帯における集約放牧の一層の普及、拡大を図る。

成果の内容・特徴

  • 越冬性は、標準品種の「ハルサカエ」、比較品種の「プラデール」より顕著に優れる(表1、図1)。
  • 雪腐大粒菌核病および雪腐黒色小粒菌核病抵抗性は、「ハルサカエ」、「プラデール」より優れ、耐寒性は「ハルサカエ」と同程度で、「プラデール」より優れる(表1)。
  • 短草・多回刈り乾物収量は、「ハルサカエ」に比べ道東平均で7%多収で、季節別生産性は「ハルサカエ」より春季と秋季に優れる(表2、図2)。
  • 放牧適性は、「ハルサカエ」よりメドウフェスク被度および放牧前草量がやや高く、やや優れる(表1)。
  • 兼用利用での1番草および2番草以降の短草・多回刈り乾物収量は、「ハルサカエ」、「プラデール」より優れる(表1)。
  • 網斑病罹病程度は「ハルサカエ」、「プラデール」と同程度で、かさ枯病罹病程度は「ハルサカエ」よりやや高いが、実用上問題になる程度ではない(表1)。
  • 推定TDN含量は「ハルサカエ」、「プラデール」と同程度である(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 適地は北海道全域、とくに道東などの土壌凍結地帯に適する。普及見込み面積は6,000haで、放牧用として「ハルサカエ」およびチモシーと置き換える。
  • 放牧利用を主体とする。

平成20年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
メドウフェスク新品種候補「北海15号」(普及奨励)

具体的データ

表1.「北海15号」の特性

図1.各試験地での越冬性および越冬後の生育状況

図2.季節生産性播種年を除く3か年合計の道東平均、括弧内数値はハルサカエ比。春季は5-6月、夏季は7-8月、秋季は9-10月。

表2.年次場所別の短草・多回刈り合計乾物収量のハルサカエ比(%)

その他

  • 研究課題名:大規模草地・飼料畑の活用のための高TDN飼料作物品種の育成
  • 課題ID:212-c.2
  • 予算区分:基盤、委託プロ(えさ)
  • 研究期間:1994~2008年度
  • 研究担当者:田瀬和浩、田村健一、眞田康治、高井智之、山田敏彦、中山貞夫、
    大同久明、水野和彦、藤井弘毅(道立北見農試)、澤田嘉昭(ホクレン)、
    山川政明(道立畜試)、佐藤尚親(道農政部)、林 拓(道立根釧農試)、
    牧野 司(道立根釧農試)