畑地型酪農経営におけるトウモロコシサイレージ多給技術の経営的効果

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要約

中規模畑地型酪農経営でトウモロコシサイレージを多給すると、配合飼料価格が48.0円/kg以上で所得は慣行を上回る。収穫労働の制約で経産牛77頭、所得20,094千円が上限となるが、飼料生産の外部化で106頭、26,566千円まで拡大可能となる。

  • キーワード:トウモロコシサイレージ多給技術、酪農、配合飼料価格、飼料生産の外部化
  • 担当:北海道農研・北海道農業経営研究チーム
  • 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畜産草地、共通基盤・経営
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

2006年末より配合飼料のみならず圧片トウモロコシ、大豆粕等の単味飼料も高騰し、酪農経営を圧迫しており、このような厳しい条件下で今後も酪農経営が継続するためには、これまでのような輸入濃厚飼料に依存した飼養方式から、自給飼料を主体とした飼養方式への転換が不可欠と考えられる。その手段として、10a当たり収量が高く、栄養価の高いトウモロコシサイレージを多給する技術の開発が現在進められており、その有効性が確認されつつある。
そこで、平均的規模で高泌乳の畑地型酪農経営(中規模畑地型酪農経営)を対象に、収益性、配合飼料価格変化による影響、飼養可能頭数の視点から、開発中のトウモロコシサイレージ多給技術の導入効果を、経営計画モデルのシミュレーションにより明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 開発中のトウモロコシサイレージ多給技術は、経産牛1頭・日当たり乾物換算でトウモロコシサイレージ=10kg、牧草サイレージ=5kgを給与するとともに、配合飼料給与量を削減する給与技術であり(以下「トウモロコシ多給」と略)、これにより年間産乳量1万kgが確保可能と見込まれる。慣行との給与量等の相違を表1に示した。また、併せて表1に経営計画モデルのシミュレーションを行う前提条件を示す。
  • トウモロコシサイレージ多給技術を導入すると、「慣行」に比べ、所得は1,140千円増加する。これは、トウモロコシ作付増加のため自給飼料費が1,807千円増加するものの、配合飼料給与量の減少により購入飼料費が2,947千円減少することによる。また、トウモロコシサイレージ多給技術の導入に伴いTDNベースの飼料自給率は10.7%高まる(表2)。
  • 配合飼料価格の上昇が所得減少に与える影響を見ると、「トウモロコシ多給」は「慣行」に比べて緩やかである。所得は、配合飼料価格45円/kgでは「慣行」の方が上回っているが、48.0円/kgで双方が同じとなり、現行(2008年8月)の62.2円/kgでは1,140千円上回るようになる。配合飼料価格の上昇に伴い、「トウモロコシ多給」の相対的な有利性は高まる(図1)。
  • トウモロコシサイレージ多給技術を導入した中規模畑地型酪農経営が多頭化した場合、収穫調製ピーク時(9月下旬)の労働制約のため、経産牛77頭、経営耕地面積48.0ha、所得20,094千円が上限となる。飼料生産をTMRセンター等の支援組織へ外部化すれば、経産牛106頭、所得26,566千円まで規模拡大可能となる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • この成果は、十勝南部地域の現地実証経営のデータに基づくシミュレーション結果であり、トウモロコシ単収は乾物換算で1.3トン/10aを前提としている。

具体的データ

表1 経営計画モデル試算の前提条件

表2 トウモロコシ多給と慣行の比較

図1 配合飼料価格の変化に伴う所得比較 注:経営計画モデルを用いて、配合飼料価格を1円ごとに変動させて行った。

表3 トウモロコシサイレージ多給技術導入における経産牛飼養頭数と所得の上限

その他

  • 研究課題名:北海道農業の動向解析に基づく技術開発方向の提示と経営類型に応じた経営継承・経営戦略・経営支援システムの策定
  • 課題ID:211-a.1
  • 予算区分:委託プロ(えさ)
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:藤田直聡、久保田哲史