圃場面傾斜化と履帯転圧および明渠作溝による融雪後の表層土壌水分低下

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要約

圃場面傾斜化と履帯転圧および圃場内明渠を組み合わせて施工した圃場は、圃場内明渠だけ施工した圃場よりも根雪消雪後の表層土壌水分が低い。さらに地表土壌硬度が高く、日中の地温が高い。

  • キーワード:圃場面傾斜化、履帯転圧、圃場内明渠、土壌水分、土壌硬度
  • 担当:北海道農研・北海道水田輪作研究チーム
  • 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・水田・園芸作
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

北海道の転換畑において、春先に融雪水による地表面滞水や表層土壌水分の高い状態が長期間持続すると機械作業が遅れ、農作物の生育遅延や減収の原因となる。そのため心土破砕や溝切り等、圃場の排水性を高めるための対策が秋に施されるが、地表面および地下排水の悪い圃場ではこれらの対策を施しても春先の表層土壌水分が高く、機械作業が遅れがちになる。そこで、このような排水性の悪い圃場を対象として、春先における農作業機の走行性を改善するために表層土壌水分を抑制し、地表土壌硬度を向上させる方策を検討する。具体的には、植物の根等による水みちを破壊し下方浸透を抑制するための耕起・転圧、表面排水を促進するための圃場面傾斜化および圃場内明渠を組み合わせる方策を検討する。

成果の内容・特徴

  • 秋にロータリー耕起を行い、500分の1勾配を設けて圃場面を均平化し(クボタ、U-45)、履帯転圧(クボタ、U-45、接地圧0.026MPa、履帯幅400mm、転圧回数10回程度)および明渠作溝(深さ15cm、底面幅20cm、間隔5m)を行った傾斜区は、水平圃場に圃場内明渠だけを施工した慣行区よりも根雪消雪後の表層土壌水分(体積含水率)が低い(図1)。
  • 耕起・履帯転圧することで土壌硬度が増すとともに、透水性が低下して(表1)下方浸透が抑制される。
  • 根雪消雪後の地表面下15cmまでの地耐力は、根雪消雪2日後では傾斜区で0.64MPa、慣行区で0.45MPa、4月25日では傾斜区で2.18MPa、慣行区で0.90MPaであり、傾斜区は慣行区に比べて地耐力が高く、根雪消雪後の地表面土壌硬度の上昇が早いことから(図2)、機械作業の開始時期を早めることができる。
  • 根雪消雪後の深さ5cmの地温は日中で、傾斜区が慣行区より2~4°C高く(図3)、蒸発が促進される。

成果の活用面・留意点

  • 本成績は、北海道農業研究センター内の疑似グライ土圃場で2007年10月3日から2008年11月11日まで実施した実験データをとりまとめた結果である。
  • 本方法は、根雪消雪後に地表面滞水が見られるような地下および地表排水が悪い圃場で有効である。
  • 履帯転圧による表土の沈降は最初の1、2回が大きいため、既に傾斜化されている圃場では、転圧回数は1、2回程度で良い。
  • 圃場面傾斜化と履帯転圧および明渠作溝作業は高土壌水分時を避ける。
  • 作物の作付け前には圃場面を耕起し、下方浸透を促進させる。

具体的データ

図1 表層体積含水率の推移 (根雪消雪日は慣行区が4月1日、傾斜区が4月5日) (縦線は標準偏差を示す)

表1 耕起・履帯転圧前後の物理性変化

図2 地表土壌硬度の推移 (根雪消雪日は慣行区が4月1日、傾斜区が4月5日) (縦線は標準偏差を示す)

図3 地温(深さ5cm)の推移)

その他

  • 研究課題名:北海道地域における高生産性水田輪作システムの確立
  • 課題ID:211-k.1
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:松田周、向弘之