コムギリビングマルチによる除草必要期間短縮と除草剤併用によるダイズ作の雑草抑制

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

コムギを利用したリビングマルチは、ダイズ作における雑草の生長を抑制し、イヌビエとオオイヌタデの除草必要期間を、慣行栽培に比べて14日から19日短縮する。播種直後の除草剤土壌処理を併用すると、収穫期に除草を要する雑草密度は、慣行に比べて1/5に低下する。

  • キーワード:リビングマルチ、除草必要期間、ダイズ、除草剤土壌処理
  • 担当:北海道農研・北海道水田輪作研究チーム
  • 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・水田・園芸作、共通基盤・雑草
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

リビングマルチは、早期に畦間を被覆し、雑草の生育を抑制するが、その効果は完全なものではない。除草体系は“除草必要期間”を求め、その期間の除草手段を組みあわせて構築する必要がある。そこで、秋まき性程度が高いコムギ品種「ホクシン」を利用したダイズのリビングマルチ栽培の除草必要期間を評価し、除草剤の使用を含めた雑草防除体系の効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • リビングマルチ栽培では、群落内の高さ35cm以下の相対照度は、慣行栽培とほぼ同様に7月下旬から8月5日頃に10%以下となる。イヌビエとオオイヌタデの除草必要期間は、慣行栽培で40日から45日程度であり、リビングマルチ栽培により除草必要期間は、慣行栽培に比べて14日から19日短縮される(表1) 。同様の効果はイヌホオズキに対しても認められる。
  • リビングマルチ栽培において、ダイズ播種後30日に圃場に移植したイヌビエとオオイヌタデは、ダイズ収穫期において、草丈は30cm以下 (図1)、 1個体あたりの乾物重は1g以下であり、穂または花房も極めて貧弱である。
  • リビングマルチ栽培において、ダイズ播種後30日以降に圃場に移植したイヌホオズキは、ダイズ機械収穫時の汚粒源となる果実生産がほとんどゼロになる(図2) 。
  • ダイズ播種直後に除草剤土壌処理を行うと、ダイズ播種後30日目まで発生した雑草個体が、収穫期の除草を必要とする雑草密度は1/5に低下する(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 除草必要期間は(畦間中央部の地表面の相対照度が10%以下になる作物の播種後日数A)-(雑草の草丈が高さCに達するのに要する日数B)ただし、高さCは群落の相対照度が10%以下に保たれている地表からの高さ”で求める。
  • 本成果はダイズ品種「ユキホマレ」、リビングマルチに「ホクシン」を用い、北海道道央地域で試験を行った結果である。コムギは8月上旬に自然に枯死した。
  • 本成果は5月下旬と、6月第1半旬にダイズとコムギを同時に播種し、コムギの播種量は12g/m2、ダイズの栽植密度は約30本/m2とし、施肥はダイズの側条に窒素2g/m2、リン酸7g/m2、カリ5g/m2施用しで行った2か年の試験結果に基づいている。
  • リビングマルチ栽培では、ダイズの栽植密度が20本/m2以下の場合や、6、7月の降雨が少ない場合に、コムギとダイズの競合により、ダイズの初期生育が抑制され、20%程度の減収をまねく場合がある(平成16年度研究成果情報「秋まき性が高い小麦を用いた大豆リビングマルチ栽培の雑草抑制効果」)。
  • 残草は、ダイズ収穫前に拾い除草をおこない、なるべく圃場外に持ち出す必要がある。

具体的データ

表1 イヌビエとオオイヌタデの除草必要期間とリビングマルチによる短縮日数

図1 ダイズ成熟期の雑草草丈に及ぼすリビングマルチの影響

図2 移植時期とリビングマルチがイヌホオズキの果実生産に及ぼす影響

図3 ダイズ播種後30日目の雑草密度と収穫期に拾い除草を必要とする雑草密度との関係

その他

  • 研究課題名:北海道地域における高生産性水田輪作システムの確立
  • 課題ID:211k.1
  • 予算区分:委託プロ(加工)
  • 研究期間:2006~2007年度
  • 研究担当者:辻博之、大下泰生、君和田健二
  • 発表論文等:辻ら (2008) 農作業研究、43(4):165-178