水稲第6染色体長腕末端領域に座乗する新規の低アミロース性QTL

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要約

由来の異なる4つの低アミロース品種・系統、「はなえまき」「柔小町」「zt14」「EM15」では、第6染色体長腕末端の共通した領域にそれぞれの低アミロース性QTLが座乗し、SSRマーカーを用いた選抜が可能である。

  • キーワード:水稲、低アミロース、DNAマーカー、はなえまき、柔小町
  • 担当:北海道農研・特命チーム員(米品質研究チーム)、低コスト稲育種研究北海道サブチーム
  • 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・生物工学、作物
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

米のアミロース含有率は、食味を左右する大きな要因であり、特に粘りを決定づける。アミロース含有率が適度に低い品種・系統は適度に粘り、食味が優れるものとして、わが国の良食味米育種に用いられている。また、低アミロース性を効率よく導入するためには、DNAマーカーを利用した育種選抜が有効である。そこで、いくつかの低アミロース品種がもつ低アミロース性QTLを解析し、選抜DNAマーカーの開発を行う。

成果の内容・特徴

  • 由来の異なる4つの低アミロース品種・系統、「はなえまき」「柔小町」「zt14」「EM15」では、それぞれと「初雫」との交配後代のF2集団の解析の結果、第6染色体長腕末端領域に共通して座乗するQTL(qLAC6hqLAC6yqLAC6zqLAC6e)が低アミロース性に大きく関与しており、近傍のRM7555等のSSRマーカーで検出できる(図1、表1)。
  • 上記の4品種・系統を用いた交配後代のF2解析集団では、qLAC6hqLAC6yqLAC6zqLAC6eをホモで持つことによって、持たない場合と比べて、アミロース含有率は有意に低減する(表1、図2)。
  • 2007年度に北海道農研(札幌市)の温室で養成した、上記の4品種・系統と「初雫」との交配後代のF2解析集団では、4つの低アミロース性QTL(qLAC6hqLAC6yqLAC6zqLAC6e)をホモで持つことによって、アミロース含有率(%)はそれぞれ平均して8.4、10.7、9.8、8.7の低減効果がある(表1、図2-A)。また、2008年度の北海道農研の水田圃場で養成した「北海300号/はなえまき」のF2集団においても、qLAC6hをホモで持つことによって、アミロース含有率(%)は平均して9.5の低減効果がある(図2-B)。

成果の活用面・留意点

  • 本研究で見いだされたQTLは、上記4つの品種・系統を供与親とした低アミロース性のマーカー育種に利用可能である。
  • 選抜に利用可能なSSRマーカーは、International Rice Genome Sequencing Project(2005、Nature 436:793-800)によって開発・公開されている。
  • 4つの低アミロース性QTLの機能等については、未解明である。

具体的データ

図1.水稲第6染色体と関連SSRマーカーおよびwx座の座乗位置

表1.RM7555マーカー近傍の低アミロース性QTL

図2.F2解析集団におけるqLAC6h遺伝子型別のアミロース含有率の頻度分布

その他

  • 研究課題名:イネゲノム解析に基づく品質形成生理の解明と育種素材の開発
  • 課題ID:221-d
  • 予算区分:委託プロ(加工)、基盤
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:松葉修一、船附稚子、黒木慎、横上晴郁、清水博之