法人における後継者不足と構成世帯以外からの後継者確保法人の特徴

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要約

北海道の農業生産法人でも、将来法人経営を担う後継者が不足し、「高齢化・後継者不足」が問題となっている。構成世帯以外から後継者を確保している法人は、構成員1人当たり販売額が大きく、給与や社会保険等の整備がより進んでいる。

  • キーワード:農業生産法人、高齢化、後継者不足、構成世帯、後継者確保
  • 担当:北海道農研・北海道農業経営研究チーム
  • 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・水田・園芸作
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

北海道においても、複数戸での農業生産法人(以下「法人」と略)が増加しており、今後の担い手の1つとして、これら法人への期待が強い。しかし、これらの法人に関しては、統計データがきわめて限られ、法人運営上の問題点や、「将来法人経営を担う予定の40歳未満の人」(後継者)の確保状況、さらに後継者確保のための条件等、不明な点が多い。
そこで、主要農業地域の複数戸法人を対象にアンケート調査(1/3抽出、郵送方式)を行い、法人の運営問題及び後継者の確保状況と構成世帯以外から後継者を確保している法人の特徴を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 回答のあった68法人(回収率40.7%)の運営問題をみると(図1)、「高齢化・後継者不足」が52%で、「資材価格高騰による収益悪化」(90%)、「価格低迷による収入減少」(72%)に次ぎ高い。また、運営問題の中で最も重要な問題をみると、割合は低下するが同じ順となる。法人の中でも、水田法人では、「高齢化・後継者不足」は「価格低迷による収入減少」に次いで重要となっており、経営継承に対する不安がより大きな問題として認識されている。
  • 「高齢化・後継者不足」を問題と指摘する回答は、設立の古い法人に多い傾向にあるが、2001年以降に設立された法人でも半数近い(表1、48%)。この要因は、2001年以降の設立法人でも後継者が「構成世帯だけでは不足」の法人が多く(60%)、後継者が「構成世帯にはいない」法人(12%)と合計すると72%と、後継者不足の解決が迫られている法人が多数に上るためである。
  • 後継者不足の解決が迫られている「構成世帯だけでは不足」および「構成世帯にはいない」と回答した法人のうち、構成世帯以外から後継者を確保している法人は15あり、確保していない31法人と比較すると(表2)、前者では構成員数が少ないが販売額は大きくなっており、構成員1人当たりの販売額が大きい。
  • 構成世帯以外から後継者を確保している法人について、社会保険や研修への対応をみると(図2)、月給制や賞与、労災、雇用保険、年金、退職金等を整備している法人割合が高く、さらに、重機等の免許取得や経験に応じた責任の付与等を実施している割合が上回っている。

成果の活用面・留意点

  • 北海道の農業生産法人の指導の上で参考となる。

具体的データ

図1 法人の運営上の問題点

表1 法人の設立年と運営問題及び後継者確保状況

表2 構成世帯以外からの後継者確保の有無別の法人の概況

図2 構成世帯以外からの後継者を確保している法人の特徴

その他

  • 研究課題名:北海道農業の動向解析に基づく技術開発方向の提示と経営類型に応じた経営継承・経営戦略・経営支援システムの策定
  • 課題ID:211-a.1
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:仁平恒夫