てんさい搾汁液を原料とするバイオエタノール生産用酵母

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要約

てんさい搾汁液を原料に高効率でバイオエタノールの生産が可能な酵母3株は、既存の実用酵母株と同等のエタノール生産能を有し、かつ、エタノール精製時の蒸留阻害要因であるグリセロールの生成量が実用株より少ない。

  • キーワード:バイオエタノール、エタノール発酵用酵母、てんさい、グリセロール
  • 担当:北海道農研・寒地バイオマス研究チーム、パン用小麦研究チーム、
            機能性利用研究北海道サブチーム、日本甜菜製糖(株)、(財)十勝圏振興機構
  • 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:バイオマス、北海道農業・畑作、食品
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

バイオエタノールの製造効率の向上には、てんさい搾汁液や馬鈴薯澱粉など各々用いる原料に適した発酵菌の開発が必要である。更には、エタノール精製時の蒸留阻害要因であるグリセロールの生成量が少ないなど、製造工程全体の効率向上に繋がる発酵菌を開発する必要がある。
そこで、バイオエタノールの製造効率向上に向け、てんさい搾汁液を原料に既存の実用酵母株と同等のエタノール生産能を有し、グリセロールの生成量が実用株より少ない高効率な発酵菌の開発を目指す。

成果の内容・特徴

  • 北海道十勝地域の植物250検体より分離した152株の酵母から、エタノール生産量が高く、かつ、グリセロール生成量が低いSaccharomyces cerevisiae に属する酵母3株(TB-1~TB-3)を選抜した(表)。
  • これら3株は、エタノール発酵用酵母の標準株であるNBRC 0216株と比べ、速やかにてんさい搾汁液からエタノールを生産する。また、実用株であるNEY株との比較では、発酵初期のエタノール生産量は若干下回るが、発酵36時間後の最終エタノール生産量は同等である(図1)。
  • てんさい搾汁液からのエタノール精製時の蒸留阻害要因であるグリセロールの発酵36時間後の生成量は、3株ともバイオエタノール用標準株および実用株に比べ約20%少ない(図2)。

成果の活用面・留意点

  • TB-1、TB-2、TB-3株は北海道農研保有の菌株であり、農研機構研究試料取扱規程に基づく手続きにより分譲が可能である。
  • 成果は、実験室規模での評価であるため、今後大規模試験による発酵性評価を行う必要がある。
  • 3株とも胞子形成能が確認されたため、交雑育種によるエタノール高変換酵母作出の親系統としての活用も期待できる。

具体的データ

表 てんさい搾汁液培地での分離酵母のエタノールとグリセロール生産

図1 TB-1、TB-2、TB-3株のてんさい搾汁液からのエタノール生産量 通気遮断、90rpmの振とう条件(n=4)

図2 TB-1、TB-2、TB-3株のてんさい搾汁液からのグリセロール生成量 発酵 36時間後(n=4)、異記号間に有意差有り(p<0.05)

その他

  • 研究課題名:寒地畑作物バイオマス資源の多段階利用技術の開発
  • 課題ID:411-a
  • 予算区分:委託プロ(バイオマス)
  • 研究期間:2007~2008年度
  • 研究担当者:波佐康弘、高桑直也、齋藤勝一、西尾善太、山内宏昭、野田高弘、
                      櫻井博章(日本甜菜製糖(株))、四宮紀之((財)十勝圏振興機構)、
                      大庭潔((財)十勝圏振興機構)