リゾプス・オリゼによるキシロースの乳酸発酵

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要約

糸状菌リゾプス・オリゼ NBRC 5378株は、キシロースから変換率85%の高効率で乳酸発酵が可能であり、難発酵性のキシロースの発酵菌として利用できる。

  • キーワード:セルロース系バイオマス、キシロース、乳酸発酵、リゾプス・オリゼ
  • 担当:北海道農研・寒地バイオマス研究チーム
  • 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:バイオマス、北海道農業・畑作
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

畑作物の生産過程で発生する麦稈などの副産物は、繊維質などの難分解性成分が多く含まれる。バイオマス分解物に含まれる糖類のうちC5糖であるキシロースは、酵母など従来の発酵微生物では発酵が困難であり、セルロース系バイオマスを変換利用する上で発酵菌の開発が急務である。そこで、これまで糖化プロセスに利用されている糸状菌の中から、生分解プラスチックの原料である乳酸の生成能を有する糸状菌リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)を活用したキシロース発酵技術の開発を目指す。

成果の内容・特徴

  • (独)製品評価技術基盤機構・生物遺伝資源部門(NBRC)のリゾプス属糸状菌86株の中で、リゾプス・オリゼNBRC 5378株がキシロースから最も多く乳酸を生産し(図1(a))、キシロースからの変換率85%の高効率で乳酸を生産する(図1(b))。
  • リゾプス・オリゼNBRC 5378株によるキシロースの発酵は、図2に示す各発酵条件で乳酸生産量が変動し、培養槽容量の50%程度の発酵液量で、初発キシロース濃度2%、pH5.2~6.0、発酵温度25°Cが最適発酵条件であり、5日間の発酵で変換量は最大値に到達する。
  • リゾプス・オリゼNBRC 5378株は凝集性を有していることから、本菌の胞子懸濁液をポリウレタンフォームと共に培養することで、容易に固定化菌体の作成が可能である(図3)。

成果の活用面・留意点

  • キシロースから乳酸への変換率(収率)は高いものの、初発キシロースが高濃度の場合に発酵阻害を生じるため、収量(絶対量)向上にはヘミセルロースを基質とした並行複発酵、あるいは、菌株改良等の検討が必要である。
  • 固定化菌体は、発酵後の固液の分離が容易な固定菌体反応や連続発酵が可能な固定化カラムなどの発酵プロセスに容易に適用可能である。固定化菌体の利用にあたってはプロセス形態や発酵条件について別途検討を行う必要がある。

具体的データ

図1 リゾプス属糸状菌によるキシロースからの乳酸、エタノール生成量(a)とNBRC5378株のキシロースからの乳酸変換率(b)(変換率は酵母におけるエタノール収率理論値を100%とした場合であり、NBRC4707株はグルコースからの乳酸生成最適株)

図2 リゾプス・オリゼNBRC 5378の発酵条件の最適化(*印:最適条件) 培地:キシロース+0.67%Yeast Nitrogen Base w/o Amino Acids+0.5%カザミノ酸、 培養容器:100ml三角フラスコ、培養方法:120rpm振盪培養

図3 固定化菌体の作成と発酵適用例

その他

  • 研究課題名:寒地畑作物バイオマス資源の多段階利用技術の開発
  • 課題ID:411-a
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:齋藤勝一、波佐康弘、阿部英幸