分娩後のケトーシス発症を低減する乾乳後期のとうもろこしサイレージ給与法

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

乳牛にとうもろこしサイレージを給与する場合、分娩4週間前から乾草を約4割含む飼料構成としTDN充足率を110%程度に制限給飼すると、分娩後の食欲減退や血中βヒドロキシ酪酸濃度の上昇を抑え、泌乳初期のケトーシス発症を低減できる。

  • キーワード:とうもろこしサイレージ、乾乳期、ケトーシス、βヒドロキシ酪酸
  • 担当:北海道農研・自給飼料酪農研究チーム
  • 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畜産草地、畜産草地
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

泌乳牛へのとうもろこしサイレージ(CS)多給は配合飼料給与量を削減でき飼料自給率向上にも貢献できる。分娩直後の飼料急変を避け泌乳初期での多給を実現するためには、分娩前からとうもろこしサイレージ給与に馴らすことが有効である。一方、CS給与は周産期疾病のケトーシスを誘発するとされている。本成果は、分娩前のとうもろこしサイレージ給与と分娩後のケトーシス発症との関係を明らかにし、ケトーシス発症を低減する乾乳後期のCS給与法を提示する。

成果の内容・特徴

  • ホルスタイン種乳牛の分娩前4週間の乾乳後期に、サイレージを約7割含む飼料を自由採食させ、TDN充足率が140%となる場合、牧草サイレージ(サイレージ主体GS区)では分娩後の体重減少率が1.9kg/日程度でケトーシス発症は認められない。しかし、牧草サイレージの約1/4量(乾物比)をCSで代替したサイレージ主体CS区では、分娩前の摂取量、TDN充足率および体重増加量は変わらないものの、分娩後の体重減少量が大きくケトーシス発症割合が33%になる(表1)。
  • サイレージ主体CS区では、分娩後2週目以降、ケトン体の一種であるβヒドロキシ酪酸(3HB)の血中濃度が著しく上昇する(図1)。初産牛は臨床症状である食欲減退と乳量低下も認められる(図2表1)。
  • 一方、乾乳後期にサイレージと乾草を約4割ずつ含む飼料をTDN充足率を110%程度に制限給与すると、牧草サイレージの約半分をCSで代替した飼料(乾草併給CS区)を給与した場合でも分娩後の血中3HB濃度の顕著な上昇は認められず、ケトーシス発症が低減できる。また、分娩後の体重減少量が1.5kg/日程度と少ない(表1)。
  • 以上の結果は、乾乳後期にTDN充足率が140%のサイレージ主体飼養時のとうもろこしサイレージ給与は、泌乳初期のケトーシス発症リスクを高めること示している。乾乳後期の飼料構成において乾草比率を4割以上とし、TDN充足率を110%程度にすることにより、分娩後のケトーシス発症を低減でき、泌乳開始直後からのとうもろこしサイレージ給与が可能となる。

成果の活用面・留意点

  • 本情報は、305日乳量水準が8.5-10tのホルスタイン種乳牛(初産牛12頭、経産牛10頭)延べ22頭を用いた大規模実証試験で得られた成果であり、高泌乳牛に対するとうもろこしサイレージを利用した飼料設計に活用できる。
  • 出穂期刈オーチャードグラス1番草サイレージ(平均TDN=67%乾物)と黄熟後期刈CS(平均TDN=68%乾物)およびオーチャードグラス乾草(平均TDN=54%乾物)を給与して得られた知見である。

具体的データ

表1 飼料構成と分娩前TDN充足率、体重変化およびケトーシス発症割合

図1 分娩前後における血中βヒドロキシ酪酸(3HB)濃度の変化

図2 初産牛における泌乳量の推移

その他

  • 研究課題名:自給飼料の高度利用による高泌乳牛の精密飼養管理技術と泌乳持続性向上技術の開発
  • 中課題整理番号:212g
  • 予算区分:委託プロ(えさ)
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:大下友子、宮地 慎、青木真理、青木康浩、秋山典昭
  • 発表論文等:1)宮地ら(2008)日畜会報、79(2):211-219