植物の耐凍性を向上させるRNAシャペロン遺伝子
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要約
シロイヌナズナの低温ショックドメインタンパク質AtCSP3はRNAシャペロンとして機能し、AtCSP3の過剰発現体は低温馴化前後の耐凍性がともに向上する。
背景・ねらい
大腸菌などの細菌においては、低温にさらされると低温ショックタンパク質(CSP)が合成される。CSPは、低温下で形成されるRNAの2次(2本鎖)構造を解きほぐす活性をもち、RNAの機能発現を助けることからRNAシャペロンと呼ばれる。大腸菌の低温下での生育において、CSPは必須の機能を果たす。細菌CSPと同様な機能をもつタンパク質が、高等植物にも存在することは、既に明らかにされているが、植物CSPが低温耐性の獲得に働いているのかに関しては、これまで不明である。そこで本研究では、シロイヌナズナのAtCSP3を用いて、植物CSPの耐凍性獲得における機能を明らかにする。
成果の内容・特徴
- AtCSP3は、大腸菌のCSP欠損株の低温致死性を回復させることから(図1)、大腸菌CSPと同一機能タンパク質であり、RNAの2次構造を解きほぐすRNAシャペロンである。
- AtCSP3は常温下においては細胞分裂が盛んな根端及び茎頂に特異的に発現し、低温下ではその発現が亢進する(図2)。
- AtCSP3欠失変異株は、野生株に比べて低温馴化前後の耐凍性が共に低下する(図3)。
- AtCSP3の過剰発現体は低温馴化前後の耐凍性が共に向上する(図4)。
成果の活用面・留意点
- 他の植物においても、相同遺伝子を高発現させることで耐凍性が強化されることが期待される。
具体的データ
その他
- 研究課題名:作物の低温耐性等を高める代謝物質の機能解明とDNAマーカーを利用した育種素材の開発
- 中課題整理番号:221e
- 予算区分:交付金プロ(実用遺伝子)、科研費
- 研究期間:2006~2009年度
- 研究担当者:今井亮三、金 明姫、佐々木健太郎
- 発表論文等:Kim, M. et al. (2009) J. Biol. Chem. 284: 23454-23460.