縞葉枯病抵抗性イネ個体を検出する高精度DNAマーカー
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要約
DNAマーカー(ST48、ST49、ST64、ST72、ST82、ST89)は、それぞれイネ縞葉枯病抵抗性と感受性品種間において異なるDNA断片を増幅する共優性マーカーで、インド型イネ品種「Modan」由来の縞葉枯病抵抗性イネ個体の選抜に利用することができる。
- キーワード:イネ、縞葉枯病、抵抗性品種、DNAマーカー、マーカー育種
- 担当:北海道農研・特命チーム員(病害抵抗性研究チーム)
- 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
- 区分:作物、共通基盤・病害虫
- 分類:研究・普及
背景・ねらい
近年殺虫剤耐性ヒメトビウンカの飛来および生息地域の拡大に伴い、ヒメトビウンカに媒介されるイネウイルス病である縞葉枯病の発生は増加傾向にある。本病の防除においては抵抗性品種の継続的な作付けが最も有効な方法であるため、水稲新品種への抵抗性の付与は必須である。現在縞葉枯病抵抗性水稲品種育成にはDNAマーカーST10およびN0708が利用されている。しかし、ST10は抵抗性優性マーカー、N0708は感受性優性マーカーであり、共にヘテロ個体を識別できない。また、マーカー育種が進んでいる水稲では、複数の形質の導入のために高精度なマーカーが複数あることが望ましい。そこで、より効率的な抵抗性新品種育成のため、ST10よりも高精度、かつ、ヘテロ個体識別可能な共優性マーカーを開発する。
成果の内容・特徴
- DNAマーカー(ST48、ST49、ST64、ST72、ST82、ST89)は、いずれもイネ第11染色体長腕動原体近傍にある抵抗性遺伝子Stvb-i領域にあり、先行開発マーカーST10とN0708とは図1に示す位置関係にある。
- DNAマーカーST48、ST49、ST64、ST72、ST82、ST89は、いずれも共優性であり、そのPCRによる増幅DNA断片およびその長さは図1および表1に示す通りである。
- ST49 はCAPSマーカーであり、増幅した感受性型断片は、制限酵素EcoRVにより切断される(図1および表1)。
- ST49~ST10間およびST72~ST82間での組換え確率は、近交系(感受性品種「黄金晴」×抵抗性品種「月の光」、F7集団)においてそれぞれ1/3629である(図1)。
- 上記近交系を用いた解析から、ST10からST72までのDNAマーカーによる増幅断片が抵抗性型断片を示す個体は縞葉枯病抵抗性を保有する(図1)。
成果の活用面・留意点
- インド型イネ品種「Modan」に由来する抵抗性個体の選抜に適用する。
- 感受性品種によっては増幅断片が得られないマーカーもある。
- ST10の利用には許諾が必要である(特許第3069662号)。
- 本マーカーの配列情報については、開発担当者まで問い合わせ願いたい。
具体的データ


その他
- 研究課題名:食用稲における病害抵抗性の強化のための遺伝子単離と機作の解明
- 中課題整理番号:221f
- 予算区分:基盤、委託プロ(QTL遺伝子)
- 研究期間:2006~2009年度
- 研究担当者:早野由里子、斎藤浩二
- 発表論文等:1)藤井ら(2008)育種学研究、10(4):151-156 2)斎藤(早野)ら「イネ縞葉枯病抵抗性を間接的に識別できる分子マーカー」特許3069662号