混合貯留乾燥における循環式乾燥機の断熱被覆による保温効果

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要約

循環式乾燥機を断熱シートで覆うなどの断熱被覆処理を行うことによって、一度加温した穀類の堆積層内の温度を48時間以上、外気温より+5°C以上で保温することができる。そのため、混合貯留乾燥において、一度加温すれば、低温下でも水分移動速度の低下を防いで乾燥を進めることができる。

  • キーワード:乾燥、循環式乾燥機、断熱、混合乾燥、グラスウール、省エネ
  • 担当:北海道農研・北海道水田輪作研究チーム
  • 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・水田・園芸作、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

大豆などの乾燥調製において、乾燥した水分吸収材を大豆に混合して貯留しておくだけで乾燥する方法(平成17年度研究成果情報)は、循環式火力通風乾燥に比較して、品質低下がほとんどないことや灯油や電力の消費量を1/3以上減らせること、監視の労力が不要なことなど多くの優れた利点を有する。しかし、北海道においては、乾燥調製時期の10月~12月は低温なため、穀温が低い場合は乾燥速度が低下するという問題がある。そこで、乾燥機を断熱被覆することによって放熱を防ぎ、乾燥を促進し、省エネルギー化を図る。

成果の内容・特徴

  • 循環式乾燥機の外壁を断熱シート(グラスウール、厚さ100mm、幅430mm、長さ2880mm、熱伝達率0.5[W/m2K])で図1のように乾燥機側板を密着して被覆することによって、外気温が低い場合に乾燥機側板からの放熱を防ぐことができる。
  • 断熱シートで被覆した乾燥機内の側板から15cm内側の大豆・小麦混合物堆積層内の温度、および断熱被覆のない対照区(被覆なし)の温度は、図2のように、対照区は、加温後の温度低下が早く、24時間以内に外気温+2°C以下に低下するのに比べ、被覆した堆積層では、48時間まで外気温+5°C以上で推移し、長時間の保温効果がある。そのため、乾燥直後の25~30°Cくらいに温まった小麦を大豆と混合することによって、途中の加温を必要とせずに迅速に乾燥することができる。
  • 堆積層内温度と外気温と堆積層、断熱シート、外表面層での熱伝達率から計算される単位面積当たり放熱量は、図3のように、被覆なしでは2時間後までの放熱量が多く、温度低下が早いが、被覆した場合は、放熱量が少なく推移し、堆積層内の温度が保たれる。
  • 一定温度条件下の試験容器の混合貯留中の混合物の水分変化は、図4のようであり、混合物は減率1段の実験式で表される水分変化を示し、温度が高い方が平衡水分差(ヒステリシス)も小さく、大豆から小麦への水分移行速度も速まる。

成果の活用面・留意点

  • 乾燥機側板の断熱方法については、断熱シートと側板を密着して貼り付け、外気が流入しないようにする。断熱シートを被覆する他に、発泡ウレタン塗布などの方法もある。
  • 混合貯留乾燥において、堆積層の穀粒の温度が10°C以下になる場合は、2時間程度、加温・循環を行って穀温を再加温する。
  • 乾燥機からの放熱量を少なくすることができるので、通常の乾燥でも穀温の低下を防ぎ、乾燥を早めることができ、エネルギーを節約することができる。

具体的データ

図1 断熱シート(グラスウール)で被覆した大豆・小麦混合貯留の循環式乾燥機

図2 断熱シートで被覆した穀粒層内部の温度変化

図3 側板からの放熱量(計算値)の比較

図4 混合貯留乾燥での温度の違いによる水分変化の比較

その他

  • 研究課題名:北海道地域における高生産性水田輪作システムの確立
  • 中課題整理番号:211k.1
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:井上慶一