育成牛の増体を慣行管理と同水準に確保できる放牧草地の省力管理法
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要約
ケンタッキーブルーグラス優占草地は入牧を早め標準量の1/3に減肥することで、放牧期間中一定の頭数で放牧する定置放牧でも余剰草の発生を軽減できる。この方法は、慣行放牧と比較し、育成牛の牧養力は約8割、個体の日増体量は同水準を確保できる。
- キーワード:ケンタッキーブルーグラス、省力化、定置放牧、育成牛、家畜生産性
- 担当:北海道農研・集約放牧研究チーム、自給飼料酪農研究チーム
- 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
- 区分:北海道農業・畜産草地、畜産草地
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
育成牛の採食量は春から秋にかけて漸増するのに対し、放牧草の再生量は春のスプリングフラッシュ時に最大となる。そのため、春から夏にかけては余剰草を採草するか、余剰草が発生しないように放牧頭数や施肥量を調節する必要がある。しかしながら、実際にはこれらの作業が行われない場合もあり、放牧草の栄養価低下にともなう家畜生産性の悪化が指摘されている。そこで、省力化のためこれらの作業を簡素化し、減肥と定置放牧(放牧期間中一定の放牧頭数で放牧する方式)による省力的管理法を提案する。 この省力管理法での家畜生産性を、牧草生産性を最大に活用する慣行管理法(標準施肥と牧草の季節生産性に合わせて放牧頭数を調整する方式)と比較して、省力化が家畜生産性に及ぼす影響を評価する。
成果の内容・特徴
- 省力管理法(省力区)ではスプリングフラッシュ時の余剰草の発生を抑制するため、季節生産性の平準なケンタッキーブルーグラス・シロクローバ混播草地を用いる。さらに、入牧時期を早め(草丈5cmの時点で入牧)、施肥量を標準施肥の1/3程度に減らしてスプリングフラッシュ後に全量施用する(表1)。
- 省力区における6月上旬までの牧草現存量は、慣行管理法(慣行区)と同程度であり、 懸念される春期の余剰草の発生は回避できる(図1)
- 放牧草の粗タンパク(CP)含量の年間平均値は約19%で、慣行区より低下するものの、最低限必要とされる12%以上を確保できる。また、推定可消化養分総量(TDN)含量は年間平均値で66%であり慣行区とほぼ同等である(表2)。
- 省力区における家畜生産性をホルスタイン種去勢育成牛でみると、牧養力は504CD/ha、日増体量が0.89kg/頭/日である(表3)。この水準は、慣行区と比較して、牧養力で8割程度、個体当たりの日増体量で同水準が確保できる良好なものである。
成果の活用面・留意点
- 早期入牧時は放牧草不足を補うため、10日間程度ロール乾草等の補助粗飼料を、1日当たり体重の1%を目安に給与する。
- 入牧時の放牧強度はヘクタール当たり合計体重1000kg/ha程度とする。
- 北海道中央部、褐色火山性土、シロクローバ乾物重割合が年間平均値27%の草地における結果である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:集約放牧飼養技術の高度化とその乳製品特性を活用した持続型酪農システムの開発
- 中課題整理番号:212d.1
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2006~2009年度
- 研究担当者:八木隆徳、高橋 俊
- 発表論文等:八木、高橋( 2010 )日草誌 56(1) : 1-7