イアコーンは機械収穫でき、そのサイレージは嗜好性と栄養価が高い

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

スナッパヘッド装備の自走式フォレージハーベスタは、とうもろこしの雌穂(イアコーン)をホールクロップ並の作業能率で収穫できる。収穫したイアコーンを密封すれば発酵品質がよく、乳牛の嗜好性や栄養価の高いサイレージが調製できる。

  • キーワード:イアコーン、飼料用とうもろこし、サイレージ、発酵品質
  • 担当:北海道農研・北海道畑輪作研究チーム、自給飼料酪農研究チーム、集約放牧研究チーム
  • 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畜産草地、畜産草地、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

飼料自給率向上には、自給粗飼料の高品質化を図ると同時に、我が国の畜産において現在1割と低い濃厚飼料自給率を高めることが不可欠である。飼料用とうもろこしの雌穂(イアコーン)は乾物生産性や栄養価が高く、雌穂のみを効率的に収穫し、安定的に貯蔵する技術があれば、濃厚飼料の自給生産の普及に結びつくと期待される。そこで、雌穂収穫専用のスナッパヘッドを装備したコーンクラッシャ付自走式フォレージハーベスタの収穫作業能率を検証するとともに、収穫したイアコーンをサイレージとして調製貯蔵し、その飼料特性を明らかにして、新たな自給濃厚飼料資源の低コスト生産のための情報とする。

成果の内容・特徴

  • 6条刈りスナッパヘッド(J社製606C)を装備したコーンクラッシャ付の自走式フォレージハーベスタ(J社製7400)と併走ダンプトラック2台で、黄熟後期以降のイアコーンをハーベスタの設定切断長5mm,コーンクラッシャのロール間隙2mmで収穫する場合の作業能率は圃場作業量が2.1ha/hで、圃場におけるイアコーンの損失率は2.4%である(図1表1)。なお圃場へ還元される茎葉は、乾物重量比でとうもろこし全体の42%である。
  • 機械収穫したイアコーンサイレージ原料の飼料成分は、乾物率が平均55.8%(51.9~60.2%)、粗タンパク質(CP)含量が平均8.0%(7.7~8.3%)、中性デタージェント繊維(NDF)含量が平均28.7%(26.4~31.5%)、デンプン含量が平均55.4%(52.7~61.9%)であり、圧片とうもろこしよりも繊維含量が高く、デンプン含量が低いものの、調製したイアコーンサイレージの可消化養分総量(TDN)は平均で77.6%乾物と査定され、配合飼料並の栄養価である。
  • イアコーンは調製時の切断長や破砕処理の有無等の調製条件に関わりなく、密封貯蔵すると乳酸発酵した良質なサイレージに調製できる(表3)。イアコーンサイレージに対する泌乳牛の嗜好性は圧片とうもろこしと同等以上である(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果はRM75日型の飼料用とうもろこし品種を十勝・道央地域で栽培し、黄熟後期から完熟期に機械で収穫し、試験用スチールサイロに貯蔵して得られた知見である。

具体的データ

写真1 スナッパヘッド装備ハーベスタによる収穫作業

表1 収穫作業能率と損失率

表2 十勝・道央地方で機械収穫したイアコーンの飼料成分

表3 飼料粒度によるイアコーンサイレージの発酵品質と泌乳牛の嗜好性の違い

その他

  • 研究課題名:自給飼料の高度利用による高泌乳牛の精密飼養管理技術と泌乳持続性向上技術の開発
  • 中課題整理番号:212g
  • 予算区分:基盤、実用技術
  • 研究期間:2008~2009年度
  • 研究担当者:大津英子、大下友子、青木真理、上田靖子、西浦明子、須藤賢司、高橋 俊、滑川拓朗(家畜改良センター十勝牧場)、中西雅昭(パイオニアハイブレッドジャパン(株))、高田雅透((株)IHIスター)、岩渕 慶(ホクレン)