北海道向き多収・極良食味低アミロース米水稲新品種候補系統「北海300号」

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要約

「北海300号」は北海道での熟期が"中生の早"に属する低アミロース米系統である。食味は「おぼろづき」「ゆめぴりか」並で、収量性は「おぼろづき」「ゆめぴりか」より高い。耐冷性は「おぼろづき」並で「ゆめぴりか」より強い。

  • キーワード:イネ、多収、良食味、低アミロース、耐冷性
  • 担当:北海道農研・低コスト稲育種研究北海道サブチーム、特命チーム員(米品質研究チーム)
  • 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:作物、北海道農業・水田・園芸作
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

北海道の高級ブランド米品種「おぼろづき」は耐冷性は強いが収量性は低い。同じく高級ブランド米品種「ゆめぴりか」は「おぼろづき」より収量性は高いが、耐冷性がやや劣るため冷害年には減収する。そこで、北海道の高級ブランド極良食味米の安定生産を可能にするため、耐冷性に優れる「おぼろづき」型低アミロース多収品種の開発を行う。

成果の内容・特徴

  • 水稲「北海300号」は、「きらら397」の低アミロース突然変異系統である「札系96118」(後の「北海287号」)と耐冷性が強く食味が良い「空育160号」との交雑後代より育成された低アミロース米系統である(表1)。
  • 育成地での出穂期は「おぼろづき」「ゆめぴりか」より1日遅く、成熟期は「おぼろづき」「ゆめぴりか」より2日遅い。出穂期、成熟期とも"中生の早"に属する。(表1)
  • 玄米収量は「おぼろづき」より10%以上、「ゆめぴりか」より5%程度多収である(表1図1)。
  • 穂ばらみ期耐冷性は「おぼろづき」並の"強"で、「ゆめぴりか」よりやや強い(表1)。
  • いもち病真性抵抗性遺伝子型は"Pia,Pii,Pik"と推定され、いもち病圃場抵抗性は、葉いもちは"やや弱"、穂いもちは"中"で、どちらも「おぼろづき」並である(表1)。
  • 白米タンパク質含有率は、「おぼろづき」「ゆめぴりか」より低い(表1)。
  • 白米アミロース含有率は「おぼろづき」よりやや高く、「ゆめぴりか」よりやや低い(表1)。
  • 炊飯米の食味総合評価は「おぼろづき」「ゆめぴりか」とほぼ同等である(図2)。
  • 冷害年の不稔発生は「ゆめぴりか」より少なく、屑米歩合は「おぼろづき」より低い(表2)。冷害年の収量は「おぼろづき」「ゆめぴりか」より多く、タンパク質含有率は両品種より低い(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 本系統の普及の可能性を明らかにする目的で大規模な試作を行う必要があるので、権利確保のための品種登録出願を行う。
  • 成熟期は「ななつぼし」よりやや遅いため、「ななつぼし」過作地域では本品種の導入により一定の収穫作業分散が可能になる。
  • 耐倒伏性は強くないので、極端な多肥栽培は避ける。
  • いもち病抵抗性は十分ではないので、適正な防除に努める。
  • 種子の入手および増殖に関しては、育成機関に問い合わせる必要がある。

具体的データ

表1 「北海300号」の特性概要

図1 奨励品種決定調査各試験における玄米収量「おぼろづき」と「北海 300 号」との関係

図2 食味官能試験成績

表2 冷害年 (2009 年 ) の不稔歩合、収量およびタンパク質含有率

その他

  • 研究課題名:直播適性に優れ、実需者ニーズに対応した低コスト業務用水稲品種の育成
  • 中課題整理番号:311a
  • 予算区分:委託プロ(加工)、基盤
  • 研究期間:1997~2009年度
  • 研究担当者:清水博之、横上晴郁、松葉修一、黒木 慎、安東郁男、荒木 均、三浦清之、今野一男