洋菓子適性が優れる高アミロースの小麦は蒸留水によるSRCテストによって判別できる

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要約

アミロース含量が高いほど薄力粉適性が優れる。「農林61号」準同質遺伝子系統ではアミロース含量は簡便な判別法である蒸留水のSRCテストと高い相関を示す。

  • キーワード:小麦、洋菓子適性、アミロース、SRCテスト
  • 担当:北海道農研・パン用小麦研究チーム
  • 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畑作
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

現在、国内にはおよそ100万トンの菓子用の小麦の需要がある。しかし、菓子製品の中でも特に付加価値の高いスポンジケーキやクッキーといった洋菓子向けの小麦粉は、その原料のほとんどを輸入小麦に依存している。本研究では洋菓子向けの国産小麦の品質を飛躍的に向上することを目的として、アミロース含量が洋菓子の品質に与える効果を解明し、輸入小麦に劣らない高品質かつ高付加価値の洋菓子向け国産小麦の判別法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 本実験に用いた系統は、小麦粉のアミロース含量を決定する3種類のワキシー(Wx)遺伝子(Wx-A1, Wx-B1, Wx-D1)をそれぞれ1つずつ変異させた8タイプの「農林61号」由来の準同質遺伝子系統である(表1)。
  • 小麦粉のアミロース含量は焼成によって膨張するクッキーの直径と強い正の相関を示す(図1)。
  • 小麦粉のアミロース含量はスポンジケーキの体積とも強い正の相関を示す(図1)。
  • 4種類のSRCテスト(蒸留水、炭酸ナトリウム、スクロース、乳酸)のうち、蒸留水のSRCテストがアミロース含量と最も強い負の相関を示す(図2)。
  • 低蛋白含量の「農林61号」準同質遺伝子系統を用いても同様の結果が得られる(データ省略)。

成果の活用面・留意点

  • SRC(Solvent Retention Capacities)テストの方法は米国穀物科学会(AACC)のAACC method 56-11に準じる。

具体的データ

表1 実験に用いた「農林61号」由来の準同質遺伝子系統の品質データ

図1 小麦粉のアミロース含量とクッキー直径およびスポンジケーキ体積との関係

図2 小麦粉のアミロース含量と SRC テストとの関係

その他

  • 研究課題名:実需者ニーズに対応したパン・中華めん用等小麦品種の育成と加工・利用技術の開発
  • 中課題整理番号:311c
  • 予算区分:基盤、ハイリスクハイインパクト
  • 研究期間:2008~2009年度
  • 研究担当者:西尾善太、伊藤美環子、田引 正、山内宏昭、三浦秀穂(帯畜大)、関 昌子
  • 発表論文等:Nishio et al. (2009) Influence of amylose content on cookie and sponge cake quality and solvent retention capacities in wheat flour. Cereal Chem. 86:313-318.