製粉によって小麦粉とふすまに配分されるデオキシニバレノールの濃度

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要約

赤かび病発生圃場産の小麦は、ブラベンダーテストミル製粉によって、小麦粉では原料小麦の約半分、ふすまでは約2倍のデオキシニバレノール濃度を示す。

  • キーワード:小麦、赤かび病、デオキシニバレノール、製粉、ブラベンダーテストミル
  • 担当:北海道農研・パン用小麦研究チーム
  • 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畑作
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

小麦赤かび病は開花期以降の穂に感染して「かび毒」を産出するため、国産小麦の安全性を脅かす重大な脅威となっている。このため、小麦赤かび病の代表的な「かび毒」であるデオキシニバレノールの暫定基準値として1,100ppbが設定されている。しかし、製粉によって小麦粉とふすま(種皮)に移行する「かび毒」の濃度に関する報告は、これまで少数の小麦品種あるいは既にブレンドされた銘柄小麦に限られている。本研究は、食品安全上重要なデータとなると考えられる小麦粉とふすまへの「かび毒」の分配率を明らかにすることを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 赤かび病抵抗性が異なる15品種の春まき小麦を用いて4年間調査した結果である(表1)。
  • 小麦粉に含まれるデオキシニバレノール濃度(y)は、原料の濃度(x)とy=0.6xの回帰式で表され、原料のおよそ半分の濃度である(図1)。
  • ふすまに含まれるデオキシニバレノール濃度(y)は、原料の濃度(x)とy=1.8xの回帰式で表され、原料のおよそ2倍の濃度である(図2)。
  • 製粉によって小麦粉とふすまに分配されるデオキシニバレノールの割合は、生産年次や原料の小麦のデオキシニバレノール濃度に関わらず、ほぼ一定である(図1図2)。

成果の活用面・留意点

  • 製粉におけるかび毒の減少率の参考データとなる。
  • 本実験のサンプルは農薬無散布の赤かび病自然感染による。製粉にはブラベンダーテストミルを用い、デオキシニバレノール濃度はELISA測定による値である。

具体的データ

表1 実験に用いた小麦品種

図1 原料小麦と小麦粉におけるデオキシニバレノール濃度の関係

図2 原料小麦とふすまにおけるデオキシニバレノール濃度の関係

その他

  • 研究課題名:実需者ニーズに対応したパン・中華めん用等小麦品種の育成と加工・利用技術の開発
  • 中課題整理番号:311c
  • 予算区分:交付金プロ(新需要麦)、基盤
  • 研究期間:2004~2009年度
  • 研究担当者:西尾善太、高田兼則、谷尾昌彦、伊藤美環子、田引正、山内宏昭、坂智広(横市大)
  • 発表論文等: Nishio et al. (2010) Deoxynivalenol distribution in flour and bran of spring wheat lines with different levels of Fusarium head blight resistance. Plant Dis. 94:(in press)