バイオエタノール生産に適したテンサイ栽培法のエネルギー効率

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要約

エネルギー効率の観点から、バイオエタノール生産に適したテンサイの栽培法は、簡易耕、多収系統の利用、根冠部収穫である。これらの方法を組み合わせることにより、エネルギー効率はさらに向上し、現行栽培法に対して26%の改善が期待できる。

  • キーワード:テンサイ、バイオエタノール、エネルギー効率、栽培法
  • 担当:北海道農研・寒地温暖化研究チーム、機能性利用研究北海道サブチーム、寒地バイオマス研究チーム、根圏域研究チーム
  • 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:バイオマス、北海道農業・畑作
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

バイオエタノール生産、利用の目的は、化石燃料の消費量を抑制し、化石エネルギー資源の保護や地球温暖化防止に役立てることにある。その効果を高めるためには、原料作物の栽培、収穫物の輸送、原料からエタノールへの変換工程など、あらゆる作業工程において、エネルギー収支の改善に有効な技術を新たに導入する必要がある。ショ糖生産のために確立されている現行のテンサイ栽培法を改め、エネルギー効率の観点から、バイオエタノール生産に適した栽培法を提案する。

成果の内容・特徴

  • 現行栽培法に対して、収穫部バイオマス(菜根)収量およびショ糖収量は、直播、殺菌剤無施用で有意に低下し、多収系統の利用、根冠部収穫(図1)では、有意に増加する(表1)。
  • 現行技術において、砂糖収量から推定されるエタノール収量は6.55 kL ha-1である(表2)。エタノール収量は、直播、殺菌剤無施用では、それぞれ5.51、4.51 kL ha-1に低下し、多収系統の利用、根冠部収穫で、7.33、7.39 kL ha-1に増加する。
  • 直播では、加温ハウスでの育苗作業の省略、菜根収量の低下、簡易耕では、プラウ耕起の省略、殺菌剤無施用では、菜根収量の低下により、トラクター作業、収穫物輸送でのエネルギー投入量が低下する(表2)。資材消費に伴うエネルギー投入量は、殺菌剤無施用で、殺菌剤の消費量が皆無となり低下するが、直播では、除草剤散布が1回増えるため、増加する。
  • 直播、殺菌剤無施用では、エネルギー投入量が減少するが、それ以上にエタノール収量が低下するため、エネルギー効率(エタノール1Lの生産に必要なエネルギー投入量)は、現行技術(5.82 MJ -1)よりも、それぞれ18、34%低下する(図2)。一方、簡易耕、多収系統の利用、根冠部収穫では、それぞれ8、10、10%改善する。
  • 簡易耕、多収系統の利用、根冠部収穫を組み合わせる場合、エタノール収量およびエネルギー投入量は、それぞれ8.72 kL ha-1および37.5 GJ ha-1と推定され、現行栽培法に対して26%のエネルギー効率の改善が期待される(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 栽培試験データを活用する本エネルギー効率評価法は、他のバイオ燃料用作物にも適用できる。
  • 殺菌剤無施用(表1)では,移植前に褐斑病および根腐れ病菌が土壌に接種されているため、殺菌剤無施用条件での収穫部バイオマスおよびショ糖収量低下に与える影響が最も大きなケースと想定される。

具体的データ

表1 各栽培法の適用がテンサイの収穫部バイオマス収量、ショ糖含量、ショ糖収量に及ぼす影響

表2 各栽培法におけるエタノール収量およびエネルギー投入量

図1 根部収穫(現行)および根冠部収穫における切断位置

図2 各栽培法におけるテンサイ由来エタノール生産のエネルギー効率

その他

  • 研究課題名:寒地畑作物バイオマス資源の多段階利用技術の開発
  • 中課題整理番号:411a
  • 予算区分:委託プロ(バイオマス)
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:古賀伸久、野田高弘、高橋宙之、岡崎和之、小林創平
  • 発表論文等: N. Koga et al. (20 09) Global Change Biol. Bioenerg. 1: 220 - 229