市販の運動強度計により放牧地における搾乳牛の採食時間が測れる

要約

人の運動強度を記録するための市販の携帯型加速度計を搾乳牛に装着し、放牧中に記録された運動強度レベルのうち、一定以上の値を採食行動とすることにより誤判別率が5.5%で判別でき、採食時間や採食行動パターンを詳細に把握することができる。

  • キーワード:運動強度計、採食時間、放牧地、搾乳牛
  • 担当:自給飼料生産利用・草地活用乳生産
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・酪農研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

搾乳牛を放牧で飼養する場合、放牧地における個体ごとの採食量を把握することが栄養管理および飼料コスト管理上、重要である。これまでに放牧牛の採食量の推定を目的として、採食時間・行動区別・反芻回数の測定等がとりくまれているが、いずれも試作品や高価な機器である、または解析に特別な計算式やソフトが必要であった。近年、人の生活習慣病予防用として、生活中の運動強度を詳細に長期間記録することが可能な携帯型加速度計(以下、運動強度計)が比較的安価に市販されている。これを牛の首輪に装着することにより、機器を改良することなく放牧地における採食時間を測定する手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 搾乳牛に強度を11段階のレベルで記録できる市販の運動強度計を装着し、記録された4秒ごとの強度レベルと行動観察による放牧中の全行動の記録とを比較すると、強度レベル1以上を「採食」としたときの誤判別率が5.5%と最小である(図1、2)。
  • 運動強度計の強度レベル1以上を記録した4秒単位のカウントを積算していくことにより、放牧中の採食行動パターンを把握できる(図3)。
  • 1日の放牧時間を4、8、20時間としたときの放牧中の採食時間を採食行動パターンから計算すると、それぞれ142.8、290.6、438.4分である(表1)。
  • 市販の運動強度計の強度レベルの値を用いることにより、専用の測定器の製作や改良をせずに放牧中の採食時間や採食行動パターンを詳細に把握することができる。

成果の活用面・留意点

  • 前後差法などによる牧区内の草量測定を組み合わせることにより、個体ごとの放牧地での採食量の推定も可能となり、放牧研究に幅広く活用できる。
  • データは35日間連続で運動強度計内に記録を残すことができる。
  • 積極的な歩行行動は強度レベルが1以上となるので、放牧地と水飲み場の距離が離れている場合は注意が必要である。

具体的データ

図1 運動強度系の強度レベル別牛行動区分の出現数と採食行動の誤判別率
表1 放牧地における採食時間推定値図3 放牧時間を4,8,20時間としたときの24時間採食行動パターン例

(上田靖子)

その他

  • 中課題名:草地の高度活用による低コスト乳生産と高付加価値化技術の開発
  • 中課題番号:120d1
  • 予算区分:交付金、委託プロ(国産飼料)
  • 研究期間:2007~2011年度
  • 研究担当者:上田靖子、秋山典昭、朝隈貞樹、渡辺也恭
  • 発表論文等:Ueda Y. et al. (2011) J. Dairy Sci. 94(7):3498-3503.