305日乳量と体細胞スコアに対する改良効果を最大にする泌乳持続性選抜基準

要約

初産と2産において、泌乳持続性(LP)と305日乳量の間には正、LPと体細胞スコア(SCS)の間には、2産LPと初産SCSとの間を除き負の遺伝相関がある。305日乳量とSCSに対する最大の改良効果を得るためには、初産のLPのみによる選抜が最善である。

  • キーワード:泌乳持続性、305日乳量、体細胞スコア、選抜、相関反応
  • 担当:家畜生産・泌乳平準化
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・酪農研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

泌乳持続性(Lactation Persistency;LP=分娩後240日乳量-同60日乳量+100)は、305日乳量との間に正の遺伝相関があり、乳房炎の管理指標である体細胞スコア(SCS)との間に負の遺伝相関があるが、その大きさは産次により異なる。そのため、LPの選抜において、初産と2産の重みを変化させることで、305日乳量およびSCSの相関反応量も変化すると考えられる。そこで、初産と2産のLPと305日乳量およびSCSとの遺伝相関を推定し、305日乳量およびSCSの相関反応が最善となるLPの選抜方法を検討する。

成果の内容・特徴

  • 初産および2産のLPと305日乳量との間には、0.11~0.56の範囲で正の遺伝相関がある(表1)。LPとSCSとの間には、2産のLPと初産のSCSとの間を除き、-0.17~-0.23の範囲で負の遺伝相関がある。
  • 種雄牛の選抜を仮定し、初産と2産のLPに対する選抜の重みを[初産:2産]=[0:1]~[1:1]~[1:0]の範囲で変化させた場合、[初産:2産]=[1:0]のとき、305日乳量における初産と2産の年当たり相関反応量の合計、およびSCSにおけるそれらの平均は、それぞれ最大(81kgおよび最小(-0.009)となる(図1)。このことから、LPの選抜により、305日乳量が増加し、かつSCSが低下する最大の改良効果を得るためには、初産のみの記録による選抜が最善である。

成果の活用面・留意点

  • 国内の乳用種雄牛の選抜指数(総合指数:NTP)においてLPを考慮するための基礎情報として利用可能である。
  • 遺伝相関は、初産牛21,238頭、2産牛15,281頭の北海道牛群検定記録(2004‐2010年)に基づく推定結果である。
  • 年当たりの相関反応量は、初産および2産のLP予測育種価における平均信頼度がそれぞれ0.69および0.62であり、選抜強度1、種雄牛の世代間隔が8年であると仮定した場合の予測結果である。

具体的データ

表1、図1

その他

  • 中課題名:乳牛の泌乳曲線平準化を核とする省力的な群管理技術の開発
  • 中課題整理番号:130f0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2009~2013年度
  • 研究担当者:山崎武志、萩谷功一、長嶺慶隆、武田尚人、佐々木修、山口 諭(北酪検)、曽我部道彦(北酪検)、齊藤祐介(北酪検)、中川智史(北酪検)、富樫研治(家畜改良事業団)、鈴木啓一(東北大)
  • 発表論文等:
    1) Yamazaki et al. (2013) Livst.Sci.152:120-126
    2) 山崎ら(2014)日畜会報、85(1):13-19