稲わらおよびソルガム稈部に含まれる機能性脂質セラミドの利用

要約

稲わらおよびソルガム稈部は、米糠由来の市販品と同一構造のセラミドを高濃度含むため、セラミド素材の原料として代替利用できる。

  • キーワード:セラミド、稲わら、ソルガム、バイオエタノール
  • 担当:バイオマス利用・エタノール変換技術
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・畑作研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

温室効果ガスおよびエネルギー問題を背景に、稲わらなどのセルロース系バイオマス、ならびにソルガムなどの糖質系バイオマスを原料としたバイオエタノールの生産技術開発が各地域で活発化している。副産物収入を考慮してエタノール製造に係る総コストをさらに低減させるためには、高付加価値物質の同時回収が効果的である。そこで、植物が含む機能性脂質セラミドに着目し、各種稲わらおよびソルガム稈部におけるセラミド含量を調査するとともに、食品・化粧品への利用を想定した安全かつ効率的な抽出条件を見出す。

成果の内容・特徴

  • 供試試料(「コシヒカリ」、「リーフスター」、「ベコアオバ」の稲わら、および「メートルソルゴー」、「高糖分ソルゴー」、「SIL-05」の稈部)には、いずれもセラミドが存在する(表1)。その含量は0.43~0.89 mg/g乾物の範囲で、市販セラミドの主要原料である米糠(0.20 mg/g乾物, 2004年度北海道農業研究成果情報「農産物およびその加工副産物における機能性脂質セラミドの含量」)よりも多い。
  • 供試試料の主要な構成セラミド種は、いずれもスフィンゴイド塩基がトランス-4, シス-8-スフィンガジエニン、および脂肪酸が2-ヒドロキシアラキジン酸で、米糠の主要構成セラミド種と同一である(表1および図1)。
  • 各試料のセラミドは、90%エタノールを用いて抽出することで、常法であるクロロホルム-メタノール(2:1, v/v)による抽出法と比べて98%の収率で抽出されることから、90%エタノールは食品・化粧品用途として安全かつ安価な溶媒として利用できる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 植物由来の市販セラミドは、グルコース付加型のグルコシルセラミドである。肌の保湿効果を有することから健康食品および化粧品原料に広く利用されているが、希少成分であるため高価である。牛乳にはコリンリン酸付加型、貝類にはアミノエチルホスホン酸付加型のセラミドが含まれるが、いずれも希少成分である。
  • セラミドの構造は植物種によって特徴があり、市販のトウモロコシ由来品も米糠と同一である。コンニャク由来品は2-ヒドロキシステアリン酸が主要な脂肪酸であり、各製造メーカーは自社セラミドの機能性研究から、独自の訴求ポイントをアピールしている。
  • セラミドは水に難溶のため、各種バイオマス原料の糖化後の残渣からも抽出できる。
  • クロロホルム-メタノール(2:1, v/v)混液およびエタノールを使用した場合の粗抽出物には、セラミドのほか、トリグリセリドなどの中性脂質も共存する。粗抽出物からさらにセラミド純度を高めるには、ヘキサンやアセトンなどの低極性溶媒による洗浄が有効である。
  • 実用化への展開にあたり、正確なコスト試算をするにはパイロットスケールでの抽出試験を実施する必要がある。

具体的データ

表1、図1~2

その他

  • 中課題名:セルロース系バイオマスエタノール変換の高効率・簡易化技術の開発
  • 中課題整理番号:220c0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2013年度
  • 研究担当者:高桑直也
  • 発表論文等:高桑、小田(2011) セラミド-基礎と応用-:108-114