国産ダブルローナタネ粕は大豆粕の代替として泌乳牛に給与できる

要約

圧搾での搾油後に生じる国産ダブルローナタネ粕は、カノーラ粕より脂肪含量が高く蛋白質含量は低いが、栄養価は大豆粕並みに高い。蛋白質のルーメン内分解は大豆粕より速い。脂肪含量が適切となる飼料設計で大豆粕の代替として泌乳牛に給与できる。

  • キーワード:ナタネ粕、ダブルロー品種、乳牛、飼料特性
  • 担当:自給飼料生産利用・自給濃厚飼料生産
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・酪農研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

イアコーンなど自給エネルギー飼料の実用化が進む中、それに組み合わせる適切な自給蛋白質飼料の利用技術の確立が急がれる。ナタネ粕は大豆粕に次いで使用量の多い蛋白質飼料であるが、国産ナタネ粕は従来、有害物質であるエルシン酸、グルコシノレート含量がともに低いダブルロー品種種由来のものがなかったため飼料として利用されていない。近年、国産初のダブルロー品種「キラリボシ」の搾油粕を肉用牛肥育で利用する事例が道内で現れている。今後、国産ダブルローナタネ粕(DLRM)の飼料消費量が多い酪農での利用が期待されるが、これまで国産DLRMの乳牛に給与した報告はない。そこで、国産DLRMの泌乳牛用飼料としての特性を調べ、高騰する大豆粕の代替が可能か明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 流通する国産DLRMは道内の比較的小規模な搾油工場で低温圧搾法による搾油後に生じたもので、エルシン酸および総グルコシノレートの含量は0.00%および20.5μmol/g(乾物ベース)とナタネの主産地であるカナダにおけるダブルロー品種(カノーラ)の基準(エルシン酸2%未満、特定のグルコシノレート類30μmol/g未満)を満たす。
  • 国産DLRMの粗脂肪(EE)含量は、溶剤抽出による搾油後の輸入カノーラ粕や大豆粕に比べて、搾油法の違いを反映してきわめて高く、粗蛋白質(CP)含量は相対的に低い(表1)。TDN含量はカノーラ粕より高く、大豆粕並みである(表1)。
  • 国産DLRM中CPのルーメン内分解は、カノーラ粕における知見と同様に、大豆粕中CPに比べて速やかで(図1)、デンプンの分解が速いイアコーンなどとの利用に適する。
  • 泌乳牛用飼料の大豆粕を、飼料全体のEEが適切とされる5%未満となるように国産DLRMで代替した飼料(表2)を給与すると、大豆粕給与量が50%節減され、泌乳牛の飼養成績は対照飼料給与時と差がなく、各種代謝産物の血中濃度は、差のある総コレステロールを含めていずれも正常値である(表3)。このときの国産DLRM給与量は平均0.9kgである。
  • 以上のように、国産DLRMの飼料特性に沿った飼料設計により、国産DLRMは泌乳牛用飼料として利用でき、大豆粕使用量の節減に寄与できる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:酪農家、ナタネ生産者、TMRセンター、飼料設計コンサルタント
  • 普及予定地域:ダブルローナタネ粕の利用可能地域
  • 現状の国産DLRM発生量は道内で約27t/年と推測され、その量は泌乳牛約30,000頭・日への給与量に相当する。
  • 搾油法が溶剤抽出や高温圧搾法による場合は、同じ品種由来でも成分含量や栄養価が異なるため、本成果は国産DLRMの当面の発生場所である低温圧搾法を採用する小規模搾油工場で生ずる製品を利用する際の参考となる。

具体的データ

図1,表1~3

その他

  • 中課題名:大規模畑作地域における自給濃厚飼料生産利用技術の開発
  • 中課題整理番号:120c5
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2014年度
  • 研究担当者:青木康浩、大下友子、根本英子、上田靖子、青木真理
  • 発表論文等:
    1)青木ら(2014)日草誌、60(3):178-185
    2)青木(2014)「自給タンパク質飼料国産ダブルローナタネ粕の利用技術」平成26年度飼料用イネ・TMRセンターに関する情報交換会資料
    3)青木(2015)「国産ダブルローナタネ粕の泌乳牛用飼料としての特性」平成26年度北海道農業試験会議(成績会議)