多収で高リン・低離水率のでん粉を有するばれいしょ新品種候補「北海105号」

要約

「北海105号」はでん粉原料用の主要品種である「コナフブキ」と比較して、でん粉重が多く、精製したでん粉はリン含量が高いが、離水率が低く従来と異なる特徴を持ち、新規用途の開発が期待される。また、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つ。

  • キーワード:でん粉、多収、高リン含量、低離水率、バレイショ
  • 担当:ブランド農産物開発・バレイショ品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話 0155-62-9272
  • 研究所名:北海道農業研究センター・畑作基盤研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

北海道におけるバレイショの作付面積は2013年で52,500haあり、このうち16,000ha程度がでん粉原料用で作付面積の約3割を占めている。でん粉原料用の主要品種である「コナフブキ」はジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持っておらず、ジャガイモシストセンチュウの発生面積拡大と密度の増加により近年減収傾向である。このため、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性で多収のでん粉原料用品種の育成が求められている。
また、バレイショのでん粉は水産練り製品に用いられる場合、離水率が低い方が適しているが、主力品種の「コナフブキ」は離水率が高いため、これに代わる低離水率のでん粉品種が求められている。このため、高品質のバレイショでん粉の安定供給を図るため、低離水率のでん粉を含有し、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性で多収のでん粉原料用品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「北海105号」はジャガイモシストセンチュウ抵抗性での「ムサマル」を母、「北海87号」を父とする交配集団から選抜・育成された系統である。
  • 「コナフブキ」に対して「北海105号」はでん粉重が多く、枯ちょう期は遅い(表1)。
  • 「北海105号」のでん粉は「コナフブキ」のでん粉と比較して、リン含量が高く、離水率は低い。従来の品種は高リン含量では離水率が高く、「北海105号」のでん粉は従来と異なる特性を持つ(表2)。
  • 市販でん粉に比べ、「北海105号」のでん粉はカマボコケーシングゲルの冷解凍時の離水率が低く、水産練り製品には「コナフブキ」のでん粉よりも適する(図1)。
  • ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持ち、Yモザイク病抵抗性も"強"である(表3)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:でん粉原料用バレイショ生産者
  • 普及予定地域・普及予定面積:北海道 1,000ha(2025年)北海道優良品種に認定
  • その他
    1)疫病菌による塊茎腐敗に対する抵抗性が"弱"であるので、塊茎腐敗に効果のある薬剤を使用するなど疫病防除を適切に行う。
    2)枯ちょう期が遅いので、収穫時期が遅い地域における栽培が望ましい。

具体的データ

表1~3、図1

その他

  • 中課題名:周年安定供給が可能な高品質のバレイショ品種及びその管理技術の開発
  • 中課題整理番号:320a0
  • 予算区分:交付金、競争的資金(農食事業)
  • 研究期間:2001~2014年度
  • 研究担当者:津田昌吾、小林晃、森元幸、高田明子、田宮誠司、浅野賢治、西中未央、向島信洋(長崎県)
  • 発表論文等:田宮ら(2015)「パールスターチ」品種登録出願番号30106号