ユウガオ花粉を利用した種なしスイカの生産

要約

ユウガオ属植物の花粉をスイカに受粉すると単為結果し、現在栽培されている2倍体スイカ品種から種なしの果実を生産することができる。種なしのスイカ果実は、種あり果実と比べて縦長で空洞が発生しやすいが、果重は同程度で糖度が高い傾向にある。

  • キーワード:スイカ、単為結果、属間交雑、種なし
  • 担当:業務需要畑野菜作・露地野菜品種開発
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・水田作研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

種なしスイカは3倍体の利用が主流であるが、通常の2倍体のスイカに比べて低温期での生育適応性が低い、結実しにくいなどの問題から普及が進んでいない。近年、カットやブロック販売などへの用途が広がっており、種のない果実への要望が高まっている。そこで、現在栽培されている2倍体品種で種なし果実として生産できる方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • ユウガオ属植物(ユウガオまたはヒョウタン)の花粉を受粉したスイカは単為結果し、種なし果実となる(表1、図1)。
  • ユウガオ属植物の花粉による結実率はスイカ花粉を用いた場合よりも低く(表1、表2)、ユウガオ品種の花粉を用いた場合はヒョウタン品種の花粉を用いた場合よりも結実率が高い傾向がある(表1)。また、受粉に用いたユウガオ属品種の違いによる種なしスイカ果実の形質の差は認められない(表1)。
  • ユウガオ属植物の花粉の受粉により、数々のスイカ品種の種なし果実の生産が可能である(表2)。
  • ユウガオ属植物の花粉によって生産された種なしスイカの果実は、種ありの果実と比べて果重、果肉色は同等であるが、縦長で、糖度がやや高く、空洞となりやすい傾向がある(表1、表2)。稔実種子は観察されず、しいな数やしいなの着色(種皮が硬い傾向がある)はスイカ品種により差がある(表2)。
  • 種なしスイカを生産するためには、開花から翌朝までのユウガオ属植物の雄花からの花粉を用いる必要があり、スイカへの受粉は開花前日(蕾)の午後または開花当日の早朝に行う(図2)。

成果の活用面・留意点

  • ユウガオ属植物の花粉を保存することは困難であり、スイカの受粉時期にユウガオ属植物の雄花の開花時期を合わせる必要がある。
  • スイカ品種によってはユウガオ属植物の花粉により結実しにくい。
  • 昆虫等によるスイカ花粉の受粉による種子形成を防ぐために、スイカ雌花には袋掛け等を行う必要がある。
  • 空洞果が多いので、カットやブロック販売などとして利用する。

具体的データ

表1~2、図1~2

その他

  • 中課題名:露地野菜の高品質・安定供給に向けた品種・系統の育成
  • 中課題整理番号:113b0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010~2014年度
  • 研究担当者:杉山慶太、嘉見大助、室崇人
  • 発表論文等:
    1)Sugiyama K. et al. (2014) Scientia Hort. 171:1-5
    2)杉山ら(2015)園学研、14(1):7-15