WSC含量が高くTDN収量の多いオーチャードグラス中生品種「北海30号」

要約

オーチャードグラス中生品種「北海30号」は、道央および道北において多収である。水溶性炭水化物(WSC)含量は「ハルジマン」より3ポイント高く、TDN収量が多い。すじ葉枯病罹病程度は「ハルジマン」より低い。放牧では、「ハルジマン」より採食量が多い。

  • キーワード:オーチャードグラス、水溶性炭水化物、TDN収量、すじ葉枯病、採食量
  • 担当:自給飼料生産・利用・飼料作物品種開発
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・酪農研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

北海道と東北の基幹イネ科牧草であるオーチャードグラスは、再生力と環境耐性に優れるが、夏季において飼料品質が低下する場合があり、飼料品質の改良が求められている。
イネ科牧草の水溶性炭水化物(WSC)は、家畜の消化性やサイレージの発酵品質と関連があることが知られている。オーチャードグラスのWSC含量を高めた品種を育成し、自給飼料の品質向上を図る。

成果の内容・特徴

  • 出穂始日は6月2日で、標準品種「ハルジマン」と同じ"中生の晩"である(表1)。
  • WSC含量は、各番草ともに「ハルジマン」より約3ポイント高く、年間平均で「ハルジマン」より3.3ポイント高い(図1)。
  • 中性デタージェント繊維(NDF)含量は、「ハルジマン」より低く、第一胃内乾物消失率は「ハルジマン」より高い(表1)。推定TDN(可消化養分総量)含量は、「ハルジマン」より約2ポイント高い(表1)。サイレージ発酵品質は、Vスコアが「ハルジマン」より6ポイント高い(表1)。よって飼料品質は、「ハルジマン」より優れる。
  • 3か年合計乾物収量は、北農研(札幌市)、雪印種苗長沼(長沼町)および上川農試天北支場(浜頓別町)で「ハルジマン」より多く、道央および道北の多雪地帯において多収である(表2)。道東地域では「ハルジマン」並みで、全場所平均では「ハルジマン」比104%で、やや多収である。TDN収量(年間合計)は「ハルジマン」比109%と多収である(図2)。
  • 越冬性と早春の草勢は、「ハルジマン」よりやや優れる(表1)。耐寒性は、"中~やや弱"、雪腐病に対する耐病性は"中"である(表1)。
  • すじ葉枯病罹病程度は「ハルジマン」より低い(表1)。すじ葉枯病に対する耐病性は、「ハルジマン」より優れる。
  • 倒伏程度は「ハルジマン」よりやや大きいが、発生程度は小さい(表1)。
  • 実規模の放牧試験(30a)において、採食量と放牧回数が「ハルジマン」より多い(表1)。放牧適性検定における利用率は、「ハルジマン」よりやや高い(表1)。よって、放牧適性は「ハルジマン」より優れる。

成果の活用面・留意点

  • 採草利用を主体に、放牧利用および採草放牧兼用にも利用できる。
  • 雪腐病に対する耐病性は「ハルジマン」より劣るが、地域適応性検定試験における各地の越冬性と1番草収量から判断して、越冬について実用上問題はない。
  • サイレージ調製において、原料草のWSC含量が10%を大きく下回ると想定される場合は、予乾やサイレージ用添加剤の使用等の対策をとる。
  • 栽培適地は、北海道全域と東北北部である。種子の市販開始は平成30年を予定。

具体的データ

表1~2、図1~2

その他

  • 中課題名:水田・飼料畑・草地の高度利用を促進する飼料作物品種の育成
  • 中課題整理番号:120b0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(国産飼料、えさプロ)
  • 研究期間:2000~2014年度
  • 研究担当者:眞田康治、田瀬和浩、田村健一、山田敏彦(北大)、高井智之、谷津英樹(雪印種苗(株))、横山 寛(雪印種苗(株))、高山光男(雪印種苗(株))、佐藤駿介(雪印種苗(株))
  • 発表論文等:2015年度に品種登録出願予定