イアコーンサイレージ給与による乳中ラクトン含量の変化

要約

牧草サイレージ給与時にイアコーンサイレージ(ECS)を圧片トウモロコシの代替に飼料中15%給与すると乳中揮発性成分のラクトン類が増加する。一方、トウモロコシホールクロップサイレージ多給時はECS代替給与の乳中ラクトン類への増加効果は小さい。

  • キーワード:イアコーンサイレージ、乳中揮発性成分、ラクトン類、乳牛
  • 担当:自給飼料生産・利用・自給濃厚飼料生産
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・酪農研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年、北海道において自給濃厚飼料としてイアコーン(トウモロコシ雌穗)サイレージ(ECS)の生産利用技術の普及が進んでいる。ECSを輸入乾燥トウモロコシ穀実の代替利用することで、乳生産性を維持しつつ、飼料自給率向上が実現できる。さらに、ECS給与によって生産された牛乳の特徴を明らかにすれば、自給濃厚飼料を利用して生産した牛乳や乳製品の差別化が期待できる。本研究では、泌乳牛の粗飼料として牧草サイレージを給与した時やトウモロコシホールクロップサイレージを併給した時のECS給与が乳中揮発性成分に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 牧草サイレージ(GS)摂取泌乳牛(平均乳量32.4kg/日)に圧片トウモロコシ(FC)の代替としてECSを0、2.3、3.3kg/日給与した場合(試験1)、ECSからのデンプン摂取量は0、1.2、1.7kg/日となり、総デンプン摂取量に占める発酵穀実由来のデンプン摂取量の割合は0、24、37%となる(表1)。
  • トウモロコシホールクロップサイレージ(WCS)とGSを1:1の割合で混合した粗飼料を摂取した泌乳牛(平均乳量33.6kg)では、FCの代替としてECSを0、1.2、2.4kg/日給与した場合(試験2)、ECS由来のデンプン摂取量は0、0.7、1.3kg/日であり、WCS由来のデンプン摂取量の2.4、2.3、2.3kg/日と合わせると、総デンプン摂取量に占める発酵穀実由来のデンプン摂取量の割合は38、48、57%となる(表2)。
  • 粗飼料源が牧草サイレージの場合、FCの代替にECSを飼料中15%混合して給与すると、乳中のγ-デカラクトンとγ-ドデカラクトンがFC給与時より有意に高くなる(図1)。
  • 一方、粗飼料としてトウモロコシサイレージ約6.6kg/日・頭を多給すると、FCの代替としてECSを給与する効果は、GSのみを給与した場合と比較して乳中ラクトン類への増加効果は小さい(図2)。このことから、牛乳中の揮発成分であるラクトン類は、ECSやWCS等給与飼料由来の発酵トウモロコシ穀実摂取量の影響を受けることが示唆される。

成果の活用面・留意点

  • ラクトン類は食品の甘い香りに関与し、発酵トウモロコシ穀実との関連が示唆されることから、国産トウモロコシ飼料としての指標や嗜好性評価等への利用できる可能性がある。
  • 完熟期刈ECS、黄熟後期刈WCS、出穂期刈オーチャードグラス1番サイレージを用い、粗濃比55:45(乾物比)でTMRを調製して実施した飼養試験の成果である。

具体的データ

表1~2、図1~2

その他

  • 中課題名:大規模畑作地域における自給濃厚飼料生産利用技術の開発
  • 中課題整理番号:120c5
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010~2014年度
  • 研究担当者:上田靖子、大下友子、青木康浩、青木真理、根本英子、西浦明子
  • 発表論文等:上田ら(2014)日本畜産学会報、85(3):301-307