堆肥化におけるイアコーン茎葉残渣の水分調整材としての特性

要約

イアコーン茎葉残渣は易分解性有機物の含有割合が高く、乳牛ふんと混合した場合には堆積物のかさ密度を低下させることから堆肥化促進効果が高い。その温度上昇効果はもみ殻やおがくずを水分調整材として混合した時よりも高く、麦稈と同程度である。

  • キーワード:イアコーン、乳牛ふん堆肥化、水分調整材、かさ密度、易分解性有機物
  • 担当:自給飼料生産・利用・自給濃厚飼料生産
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・酪農研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

北海道は寒冷地であることに加え、堆肥化処理に必要な水分調整材が慢性的に不足しており、堆肥品質が低下する傾向にある。イアコーン収穫後の茎葉残渣はこれまで圃場にすき込まれることが多かったが、炭素分を豊富に含む植物残渣の圃場への投入は、作目や生育ステージによっては窒素飢餓を危惧する声もある。しかしながら圃場から回収したイアコーン茎葉残渣を堆肥化の水分調整材として利用することで、ふん尿に由来する窒素源を付与し、更に堆肥原料の水分を低減化することで窒素飢餓の回避と堆肥化処理の適正化が期待できる。本研究ではイアコーン茎葉残渣および一般的に堆肥化の水分調整材として利用されているおがくず、麦稈、もみ殻を乳牛ふんと混合した時のそれぞれの堆肥化プロセスの比較を行い、その水分調整材としての特性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • イアコーン茎葉残渣の易分解性有機物量の指標である生物化学的酸素要求量(BOD)値は、麦稈よりは低いものの、オガクズおよびもみ殻よりもそれぞれ3.3、2.0倍高い。イアコーン茎葉残渣の部位別では、茎髄のBOD値が最も高い(表1)。
  • イアコーン茎葉残渣を混合した乳牛ふんの初発時のかさ密度は、麦稈の混合時と同程度、おがくずおよびもみ殻との比較でそれぞれ0.58、0.67倍の低い値である(表2)。一般的に堆肥化では通気性が高いほど有機物分解が促進される傾向にある。イアコーン茎葉残渣の通気性改善効果は、おがくずやもみ殻よりも高く、麦稈と同程度と推定される。
  • 乳牛ふんに対するイアコーン茎葉残渣の混合は、最高温度(54.3°C)、および堆肥温度の積分値(温度曲線下の面積)(7310°C・h)の両者においておがくずやもみ殻の混合よりも有意に高く(p<0.05)、麦稈の混合と同程度の温度上昇をもたらす(表3)。
  • 7日間の堆肥化試験終了時における有機物減少割合は堆肥温度の積分値と比例しており、イアコーン茎葉残渣の混合堆肥が31.1%で最も高く、以下、麦稈、オガクズ、もみ殻の順で低くなる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 本研究は有効容積12.3Lの小型堆肥化装置を用い、乳牛ふんと各水分調整材を混合した原料3kg(水分75%)を連続通気(0.53L/min/kg-DM)した時に得られたデータである。堆肥原料の重量が少なく水分も高いために、最高温度および堆肥温度の積分値は実規模堆肥で観察される値よりも低い傾向にあるが、処理区間で認められた温度の差異は、実規模堆肥における最高温度の上昇や高温持続時間の延長等に反映されると考えられる。
  • 供試した水分調整材の水分は4.3~5.8%の範囲であり、麦稈およびイアコーン茎葉残渣については、2cmの長さに細断されている。
  • 本研究で示されたイアコーン茎葉残渣の特性は、残渣を水分調整材として利用する際の基礎的知見となる。

具体的データ

表1~3

その他

  • 中課題名:大規模畑作地域における自給濃厚飼料生産利用技術の開発
  • 中課題整理番号:120c5
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2014年度
  • 研究担当者:花島 大
  • 発表論文等:Hanajima D. (2014) Anim. Sci. J. 85(10): 919-923