放牧専用利用オーチャードグラス草地の収量、栄養価、永続性

要約

北海道・道央においてオーチャードグラス草地を草高25cm目安で放牧専用利用した場合、年間7回以上の放牧が可能で嗜好性に問題はなく、可消化養分総量(TDN含量)は70%以上に維持される。乾物収量は7.5t/ha以上で、永続性はチモシー草地よりも優れる。

  • キーワード:永続性、栄養価、オーチャードグラス、収量、放牧
  • 担当:自給飼料生産・利用・草地活用乳生産
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・酪農研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

北海道内で利用される牧草種はチモシー(TY)が主体をなしているが、1番草採草後の再生力が高くないため、雑草の侵入を受けやすく維持年限が短い、多回刈り利用になじまないなどの問題がある。これに対してオーチャードグラス(OG)は再生力が旺盛で省面積での放牧が可能であり、今後北海道でも想定が必要とされる耐暑性にも優れる。また、高糖含量品種の開発が進められており、利用の拡大が見込まれる草種である。一方、季節による生産性の変動が大きく、放牧には使いづらいとされるが、短草状態での利用を徹底することによりこの問題を緩和できる可能性がある。以上の観点から、短草状態の放牧専用利用条件下におけるOGの特性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 北海道札幌市において、OG中生品種「オカミドリ」主体シロクローバ(品種:「ソーニャ」)混播草地60m2を対象に、草高が概ね25cmに達するごとに、ホルスタイン種未経産牛4頭を約1時間放牧する利用を5年間継続した結果である。実際の放牧前草高と乾物草量は平均値で順に27.1cm、182g/m2、年間施肥量は窒素とリン酸が9.0~12.0 g/m2、カリが9.6~12.8g/m2である。
  • 造成後利用5年目まで(1997~2001年)の乾物収量は7.5~11.7t/ha/年を示し、年間7回以上の放牧利用が可能である(表1)。一方、短草利用条件下での5月の日乾物再生量は平均値で9.1g/m2を示し、生産性の季節変動は、草高約30cmで同様に放牧専用利用したTY(品種「ホクシュウ」)草地と比較し抑制されつつも消失はしない(図1)。
  • 放牧後の草高と乾物草量は平均値で順に9.7cm、56g/m2である。この程度の利用を行うことにより放牧回次ごとの平均利用率は69.5%を示し、前記TY草地での平均利用率63.8%と比較しても、嗜好性に問題はない。また、放牧期間中のTDN含量は70~75%で推移し、前記TY草地と比較して遜色ない(図2)。
  • OG草地の利用5年目における草種構成割合は乾物重量比でOGが79%を占め、前記TY草地よりも永続性に優れる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 北海道の道央・道南地域でOGを放牧専用利用する場合に活用できる。
  • OGの放牧専用利用には、春は早期に放牧を開始し、春季の休牧日数を15日以下に短縮するなどの措置により草を徒長させないこと、必要に応じて放牧強度を上げ、掃除刈りを実施するなどの対応により放牧後の残草量を減らすことが必要と推察される。
  • 現在、「オカミドリ」の後継品種として「ハルジマン」が市販されている。

具体的データ

表1、図1~3

その他

  • 中課題名:草地の高度活用による低コスト乳生産と高付加価値乳製品生産技術の開発
  • 中課題整理番号:120d1
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1994~2001、2013~2014年度
  • 研究担当者:須藤賢司、池田哲也、梅村和弘、落合一彦、小川恭男
  • 発表論文等:須藤ら(2014)北農研報、202:13-20