初産乳牛の分娩後排卵時期と血漿中抗酸化物質濃度の変化

要約

初産乳牛は分娩4週前から血漿中ビタミンAやE濃度及び摂取ビタミンEとβ-カロテン量に対する血漿中ビタミンA濃度の割合が低下し、分娩後0週から1週に最低となる。また、早期排卵牛は分娩後0週から1週に酸化ストレスマーカー濃度が低下する。

  • キーワード:高泌乳牛、酸化ストレス、抗酸化物質、早期排卵
  • 担当:家畜生産・繁殖性向上
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道研究センター・酪農研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

乳牛の繁殖性低下は重要な問題となっており、分娩後のボディコンディションの急激な落ち込みによる脂質代謝の異常や、酸化ストレスがその一因であると報告されているが、分娩後の卵巣機能への影響については詳細に検討されていない。また、分娩後3週間以内の排卵は、乳牛のエネルギーバランスが改善される指標の一つになるといわれている。そこで、分娩後の排卵時期の違いと飼料から摂取される抗酸化物質の動態によって、周産期乳牛の卵巣機能と酸化ストレスの関係の有無を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 分娩後25日から27日の間に黄体を超音波診断装置で確認できた初産乳牛を分娩後比較的早期に排卵した早期排卵牛とし、黄体の確認ができなかったものを遅排卵牛として、早期排卵牛と遅排卵牛を比較する。
  • 早期排卵牛、遅排卵牛ともに、全ての牛で血漿中ビタミンA、 E及びβ-カロテン濃度は分娩前4週から分娩に向けて低下する傾向があり、分娩後0週、もしくは1週後に最低になった後、上昇傾向に転じる(図1)。
  • 摂取ビタミンEと摂取β-カロテン量に対する血漿中ビタミンA濃度の割合(P < 0.01)は、遅排卵牛の方が早期排卵牛より高い(図2)。このことから、遅排卵牛の肝機能の減退が疑われる。
  • 分娩前後の遅排卵牛の血漿中チオバルビツール酸反応物濃度は早期排卵牛よりも高く、早期排卵牛より酸化ストレス負荷が大きいと推測される(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 分娩後乳牛の酸化ストレス軽減技術の開発に活用できる。
  • 本試験データは、粗飼料主体の飼料を給与され、ビタミン量が常時充足された環境で飼養されている初産乳牛を供試したものである。

具体的データ

図1~3

その他

  • 中課題名:受精・妊娠機構の解明と調節による雌牛の繁殖性向上技術の開発
  • 中課題整理番号:130b0
  • 予算区分:交付金、競争的資金(実用技術)
  • 研究期間:2011~2014年度
  • 研究担当者:青木真理
  • 発表論文等:Aoki M. et al. (2014) Anim. Sci. J. 85(5): 532-541