全国農地の1kmメッシュ積雪深分布推定モデル

要約

全国の1kmメッシュの積雪深分布を日単位で推定するモデルである。農研機構が提供するメッシュ農業気象データおよびアメダスで観測値とを組み合わせて、アメダス積雪深を単純に空間補間したものよりも高分解能で積雪深分布を推定することができる。

  • キーワード:積雪深、積雪水量、メッシュ気象データ、雪害
  • 担当:気候変動対応・気象災害リスク低減
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・大規模畑作研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

積雪は耕起や施肥等の圃場作業の制限要因であるとともにムギ類等の越冬作物の生育に影響を与える。このため、積雪の空間的・時間的な分布を把握し、1週間程度先までの予測を行うことは、適切な作業計画を立てる上で重要である。そこで、積雪水量と積雪深について1kmメッシュで現況値を推定し、さらに週間予報を用いた予測にも対応できる積雪水量モデルを開発し、メッシュ農業気象データシステムに搭載する。

成果の内容・特徴

  • 農研機構が提供するメッシュ農業気象データより積雪水量(雪を融かした時の水量)の分布を推定してアメダス積雪深を補間することにより、アメダス積雪深の単純な補間よりも高精度に1kmメッシュでの積雪深分布を推定する(図4)。
  • 降雪水量はアメダス観測点における降水量および積雪深より求める。湿球温度による雨雪判別・風速による降水量計捕捉率補正をおこなって推定した降雪水量分布を、アメダス観測地点間の平均距離と同程度の半径10kmで移動平均し、推定値に含まれるランダムな誤差や降水量計の型式の違いによる過大・過小評価を低減させる。さらにアメダス積雪深より推定される日降雪深を用いて補正を施して、降雪水量分布を得る(図1)。
  • 融雪水量は、メッシュ農業気象データより顕熱フラックス、潜熱フラックス、放射収支および積雪内貯熱量の変化を求め、熱収支法によって計算する。ここで、昼間の加熱と夜間の冷却とを再現するため、日値の気象データより気温・風速・湿球温度の昼間平均値および夜間平均値を推定し、半日単位のステップで計算をおこなう。降雪水量と融雪水量の差分を日々積算することにより積雪水量を推定する。このモデルにより推定された積雪水量から計算される積雪日数のRMSE(二乗平均平方根誤差)は、アメダス積雪深観測地点全体で10~15日程度である(図2)。
  • さらに、推定された積雪水量を各アメダス地点における積雪深で除して各地点の積雪密度を求め、1kmメッシュに空間補間する。積雪水量分布をこの積雪密度分布で除すことにより積雪深分布を得る。その際、求めた積雪密度が既往の観測例から見積もられる積雪密度の範囲を超えている場合は積雪水量分布にバイアス補正をかけ、積雪水量推定誤差の蓄積を防ぐ(図3)。当日以降の予測値については降雪してからの日数と積雪水量から積雪密度を推定する経験式を用いて積雪深分布に変換する。以上の手法により日々の全国の積雪深分布図を作成する(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 本モデルは農研機構が提供しているメッシュ農業気象データシステムに搭載される予定である。
  • 本モデルは農地を対象としているため、地形による吹き溜まりや樹林地の放射環境の違いなどは考慮していない。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:気象災害リスク低減に向けた栽培管理支援システムの構築
  • 中課題整理番号:210a3
  • 予算区分:交付金、競争的資金(科研費)
  • 研究期間:2011~2014年度
  • 研究担当者:小南靖弘、広田知良、井上聡、大野宏之
  • 発表論文等:小南ら(2015)雪氷、投稿中