生食用バレイショ品種の低温貯蔵による糖増加特性

要約

生食用バレイショでは2°C貯蔵により糖が増加し、270日後には特に「インカのひとみ」「インカのめざめ」で「キタアカリ」の2倍量となる。「インカのめざめ」において増加した糖量は室温で減少するが、低温に戻すことで出庫時の8割程度まで回復できる。

  • キーワード:バレイショ、低温貯蔵、糖含量、品種間差
  • 担当:ブランド農産物開発・バレイショ品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・畑作基盤研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

バレイショは低温貯蔵すると糖が増加するが、増加程度は品種により異なる。油加工用原料バレイショを扱う実需者においてはこれら違いが把握されており、品種ごとに貯蔵温度や出庫時期等をコントロールして周年供給を実現している。しかし、生食用では品種ごとの貯蔵特性は、考慮されていないのが現状である。そこで、生食用において低温貯蔵の糖増加特性を品種ごとに把握するとともに、低温出庫後の糖変動を解析して、低温糖化を効果的に実施できる貯蔵条件・ハンドリング法等の構築を目指す。

成果の内容・特徴

  • 貯蔵前の全糖量はいずれの品種も3mg/g生重量未満と低いが、2°C貯蔵により増加し270日後には「キタアカリ」「シャドークイーン」で約25mg/g生重量、「インカのひとみ」「インカのめざめ」では約50mg/g生重量以上、「ノーザンルビー」「スタールビー」ではこれら2グループの中間程度の35~40mg/g生重量となる(図1)。これらから、「インカのひとみ」「インカのめざめ」は長期2°C貯蔵で糖が顕著に増加する品種であるとわかる。また、「スタールビー」は貯蔵90日後では「インカのひとみ」と同程度に糖量が高い品種である。
  • 増加した糖組成から、「インカのひとみ」「インカのめざめ」は「ショ糖増加型」、「キタアカリ」は「還元糖増加型」に分類できる。「ノーザンルビー」「スタールビー」「シャドークイーン」は3糖のうちショ糖量が最も高いが、還元糖についても「キタアカリ」と同様に増加する両タイプの中間的な特性を持つ品種である(図2)。
  • 「インカのめざめ」において、増加した糖量は低温貯蔵から室温に移すと1週間後に40%弱、1ヶ月後に50?70%強減少するが、1週間後までに室温から低温に戻すことで、その後3週間で出庫時の80%程度まで回復する(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 低温貯蔵による品種ごとの糖増加程度のアピールや、出荷のタイミング設定などの資料として活用できる。
  • 低温糖化した糖量を維持するための出庫後のハンドリング法など、販売戦略構築のための資料として活用できる。
  • 低温貯蔵により糖の増加した生食用バレイショについては、出庫後調理されるまでの取り扱いが重要であることを、実需者・消費者に向けて情報発信する際の資料となる。

具体的データ

図1~3

その他

  • 中課題名:周年安定供給が可能な高品質のバレイショ品種及びその管理技術の開発
  • 中課題整理番号:320a0
  • 予算区分:交付金、その他外部資金(受託試験)
  • 研究期間:2012~2014年度
  • 研究担当者:遠藤千絵、石黒浩二、瀧川重信、野田高弘、波佐康弘(波佐農場)
  • 発表論文等:遠藤ら(2015)日本食科工誌、62(1):50-55