穂ばらみ期耐冷性が強く多収の業務用米に適する水稲新品種「雪ごぜん」

要約

「雪ごぜん」は、"やや早"に属する粳種である。穂ばらみ期耐冷性は"かなり強"で、精玄米収量は「きらら397」より多い。食味は「きらら397」並である。

  • キーワード:イネ、耐冷性、多収、業務用米、雪ごぜん
  • 担当:作物開発・利用・水稲品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・寒地作物研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

家庭での米の消費量が減少する中で、中食・外食産業における米の消費は安定している。このため、低コスト生産が可能な高い収量性を持ち、食味・品質が一定のレベル以上に達している業務用米に対する実需者のニーズは非常に高い。また、北海道における業務用米の安定生産のためには、耐冷性の強化が非常に重要である。そこで、耐冷性が強く、多収の業務用米に適する品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「雪ごぜん」は、良食味の「北陸190号」を母、低タンパク質で耐冷性が極強の「札系97100」(後の「北海PL9」)を父として交配したF1を母とし、耐冷性の強い「北海291号」を父とする交配組合せから育成された品種である。
  • 育成地における出穂期は「きらら397」より1日遅い"やや早"、成熟期は「きらら397」より2日遅い"中"に属する粳種である(表1)。
  • 稈長および穂長は「きらら397」より長く、穂数は「きらら397」並で、草型は"穂数型"である(表1)。
  • 耐倒伏性は"やや弱"で、「きらら397」よりやや弱く「ななつぼし」並である(表1)。
  • 穂ばらみ期耐冷性は「きらら397」「ななつぼし」より強い"かなり強"である(表1、表2)。いもち病真性抵抗性遺伝子型は"Pia、Pii"と推定される。いもち病圃場抵抗性は、葉いもちは"やや弱"、穂いもちは"中"である(表1)。
  • 標肥区、多肥区のいずれにおいても、精玄米重は「きらら397」よりも多い(表1、図1)。また、穂ばらみ期耐冷性が強いため、冷害年においても「きらら397」よりも精玄米重が安定している(図1)。
  • 玄米品質は「きらら397」並かやや優れ、食味は「きらら397」並である。「きらら397」と比較して、アミロース含有率は高く、タンパク質含有率は低い(表1)。
  • 現地試験の精玄米重は、2カ年ともに640kg/10a以上で安定している(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 穂ばらみ期耐冷性が強いため、業務用米の安定生産が可能となる。北海道内の米卸業者が業務用米として道央地域での契約栽培を予定しており、30ha程度の作付けが見込まれる。
  • いもち病抵抗性は十分ではないので、適正な防除に努める。
  • 耐倒伏性は強くないので、極端な多肥栽培は避ける。

具体的データ

その他

  • 中課題名:米粉等加工用・業務用水稲品種の育成及び米の未利用成分利用技術の開発
  • 中課題整理番号:112a0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(加工プロ、バリュープロ)
  • 研究期間:2001~2015年度
  • 研究担当者:梶亮太、梅本貴之、清水博之、安東郁男、松葉修一、池ヶ谷智仁、保田浩、横上晴郁、黒木慎、田村泰章
  • 発表論文等:清水ら「雪ごぜん」品種登録出願2014年6月2日(第29257号)