寒地向け多収・低アミロース米水稲新品種候補系統「北海324号」
要約
「北海324号」は北海道での出穂期が"やや早"に属し、Wx1-1とqAC9.3の2つの低アミロース遺伝子を持つアミロース含有率が約10%の系統である。炊飯米は粘りが強く良食味であり、玄米ご飯やいかめし、冷凍寿司などの加工用途にも適する。
- キーワード:イネ、低アミロース、玄米ご飯、Wx1-1、qAC9.3
- 担当:作物開発・利用・水稲品種開発・利用
- 代表連絡先:電話011-857-9260
- 研究所名:北海道農業研究センター・寒地作物研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
低アミロース米品種は、その炊飯米の粘りは強く、良食味であり、これまでの水稲育種に活用されてきている。低アミロース性については、近年の北海道では、(1)「あやひめ」に代表されるアミロース含有率約8%、(2)「おぼろづき」に代表される約14%、(3)「ゆきさやか」に代表される約16%といった、いくつかのグループに分けられ、用途や加工適性が異なる。そこで、複数の低アミロース遺伝子を集積し、異なるアミロース含有率の低アミロース米系統を育成するとともに、その優れた加工用途などを示すことで新たな米の消費拡大を図る。
成果の内容・特徴
- 水稲「北海324号」は、qAC9.3の低アミロース遺伝子を持ち、耐冷性極強の中間母本「北海PL9」を供与親に、Wx1-1の低アミロース遺伝子を持ち、多収で耐冷性の強い品種「ゆきがすみ」を戻し交配親として、マーカー選抜を行いながら5回交配した後代より、選抜・育成された低アミロース系統である(表1)。
- 育成地・標肥区における出穂期は「あやひめ」より1日遅い"やや早"、成熟期は「あやひめ」より4日遅い"中"に属する(表1)。
- 玄米収量は、「あやひめ」より10%程度多収で、「ななつぼし」並である(表1)。
- 穂ばらみ期耐冷性は"かなり強"で、「あやひめ」「ななつぼし」よりも強い(表1)。
- いもち病真性抵抗性遺伝子は、"Pia,Pii,Pik"と推定され、いもち病圃場抵抗性は、葉いもち、穂いもちともに"やや弱"であり「あやひめ」よりも劣る(表1)。
- Wx1-1とqAC9.3の二つの低アミロース遺伝子を持ち、白米のアミロース含有率は約10%の低アミロース系統であるが、「あやひめ」より2ポイント程度高い(表1)。
- 白米のタンパク質含有率は、「あやひめ」並である(表1)。
- 玄米による炊飯米、白米によるいかめしや冷凍棒寿司など粘りが強いことを利用した用途への加工適性に優れ、食味官能評価も高い(表2、図1)。
- 成果の活用面・留意点
- 玄米食やいかめしなどの、炊飯米の粘りが強いことを活かした用途や加工食品の開発に利用できる。
- 本系統は、旭川市で数haの限定的な普及が見込まれるため品種登録出願を行う。
- 耐倒伏性は強くないので、極端な多肥栽培は避ける。
- いもち病抵抗性は十分ではないので、適正な防除に努める。
- 種子の入手および増殖に関しては、育成機関に問い合わせる必要がある。
具体的データ
その他
- 中課題名:米粉等加工用・業務用水稲品種の育成及び米の未利用成分利用技術の開発
- 中課題整理番号:112a0
- 予算区分:交付金、委託プロ(加工プロ・実用技術)
- 研究期間:2009~2015年度
- 研究担当者:松葉修一、梶亮太、梅本貴之、清水博之、横上晴郁、黒木慎、池ヶ谷智仁、保田浩、芦田かなえ、幸谷かおり
- 発表論文等:梶ら「ゆきむつみ」品種登録出願2016年4月11日(第31048号)